カリフォルニア州:商業用 vs 住居用不動産賃貸の違い
カリフォルニア州で不動産を借りる際、商業用と住居用では法的保護、契約条件、コスト構造などが大きく異なります。これらの違いを理解することは、適切な物件選択と契約交渉において重要です。
法的保護の根本的違い
住居用不動産ではテナント保護法により、家賃統制、立ち退き制限、敷金返還保証などが法的に保障されています。一方、商業用不動産ではこうした保護は限定的で、契約条件は当事者間の交渉に委ねられます。
家賃統制と賃料設定の違い
住居用ではAB 1482(2019年テナント保護法)により年間の家賃上昇率が最大10%に制限されています。商業用不動産にはこのような家賃統制はなく、市場原理と契約に基づいて決定されます。
契約期間と条件の柔軟性
住居用は1年契約や月極契約が一般的で、更新もしやすい傾向にあります。商業用は5〜10年の長期契約が標準で、オプション条項や転借権など複雑な契約交渉が必要です。
敷金と保証の要件
住居用の敷金は1〜2ヶ月分で返還にも法的規制があります。商業用は3〜6ヶ月分が一般的で、保証人や銀行保証が求められることもあります。
立ち退きプロセスの違い
住居用では「正当な理由」がなければ立ち退きが認められず、通知期間も30〜60日と長期です。商業用では契約違反に基づく3日通知など、迅速な対応が可能です。
費用負担の構造
住居用では基本的に貸主が修繕費を負担しますが、商業用ではNNN契約によりテナントが税金・保険・修繕費を負担します。
使用目的と改装の制限
住居用は居住目的限定で改装も制限されますが、商業用は契約条件に基づき内装変更(TI)が可能です。ただし行政許可や各種法令遵守が必要です。
保険要件の違い
住居用は家財保険程度で済むことが多いですが、商業用では賠償責任保険や事業中断保険など高額な保険加入が義務づけられます。
許認可と規制遵守
商業用不動産では、営業許可・環境許可・保健所許可など、業種に応じた複数の許認可が必要となります。住居用にはこうした要件はありません。
税務上の取り扱い
住居用家賃は原則として所得控除対象外ですが、商業用では賃料・改装費・敷金などが事業経費として控除可能です。
デューデリジェンスの重要性
契約前には物件の物理的・法的・経済的調査を十分に行うべきです。貸主の信用調査や近隣の開発計画なども確認することが推奨されます。
まとめ
カリフォルニア州での商業用不動産賃貸には、高い賃料という課題がありますが、大きな成長機会も存在します。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律上の助言を構成するものではありません。具体的なご相談については、必ずカリフォルニア州の有資格専門家にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和