田中良和国際法律事務所

「Reasonable Efforts」「Best Efforts」「Commercially Reasonable Efforts」の違いとは?

契約書のドラフトやレビューをしていると、「Reasonable Efforts(合理的努力)」「Best Efforts(最善の努力)」「Commercially Reasonable Efforts(商業的に合理的な努力)」という表現がよく登場します。いずれも「努力義務」を示す言葉ですが、実務上はどのような違いがあるのでしょうか?

この記事では、カリフォルニア州の契約実務および裁判例に基づいて、これらの用語の意味と実質的な違いを解説します。


定義: 通常の注意義務・努力義務を意味し、契約当事者にとって過度な負担を課さず、合理的な範囲内で目的達成のために努力することを求めます。

特徴:

  • 客観的な第三者の視点で判断される
  • 経済的な合理性を考慮
  • 不成功でも違反とならない可能性がある

実務例:「当社は、合理的努力をもって、製品の納入を速やかに行うものとする。」

定義: 最も高いレベルの努力義務を意味すると解されることが多く、契約当事者が可能な限り最大限の努力を尽くすことを求めます。

特徴:

  • Reasonable Effortsよりも高い基準とされる場合がある
  • 一部の裁判例では「ほぼ全ての合理的な手段を講じること」と解釈される
  • しかし、必ずしも「成功」を保証する義務ではない

注意点: アメリカの判例では、「Best Efforts」と「Reasonable Efforts」に実質的な違いがあるかは事案により分かれています(例:Praxair, Inc. v. ATMI, Inc., 2004 WL 883395 (Del. Ch. 2004) では大差なしとされた)。カリフォルニアでは、契約文脈や交渉経緯から判断される傾向があります。

定義:「Reasonable Efforts」の中でも特に、商業上の慣行や経済合理性を考慮した努力を意味します。

特徴:

  • 商習慣・業界基準がベースとなる
  • 費用対効果や利益への影響を考慮可能
  • 不確実な成果に対する責任を軽減しやすい

実務例:「売主は、商業的に合理的な努力をもって、製品の修理サービスを提供する。」

結論から言えば、用語間に明確な法的な序列や定義はなく、文脈と契約内容により評価が分かれます。ただし、以下のような一般的な理解はあります:

用語努力義務の強さ(目安)裁判所の判断の指標
Best Efforts高いあらゆる手段を尽くしたか
Reasonable Efforts中程度客観的に見て合理的な行動をとったか
Commercially Reasonable Efforts中〜やや低い業界慣行と経済合理性に照らして妥当か

まとめ

  • 「Best Efforts」は最も強い努力義務と解釈される可能性があるが、裁判所の解釈にはばらつきがある
  • 「Reasonable Efforts」は中立的で広く使われている
  • 「Commercially Reasonable Efforts」は経済合理性や商習慣を考慮した努力義務で、リスクを限定したい契約者に向いている

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案についての法的助言を提供するものではありません。具体的な契約条項については、弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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