田中良和国際法律事務所

【カリフォルニア不動産法】売主がデポジット返還を拒否?「Bad Faith」に対する1,000ドルのペナルティで対抗する方法

売買契約を正当な理由で解除(キャンセル)したにもかかわらず、エスクローに入れた手付金(Deposit)が戻ってこない——。

本来であればスムーズに返還されるべき場面で、売主が理不尽にサインを拒むケースは残念ながら少なくありません。感情的になったり、単なる嫌がらせ(たちの悪い売主)で同意しない場合、買主としては非常にストレスが溜まりますし、何より大切なお金が拘束されたままになってしまいます。

エスクロー会社は中立な第三者であるため、**「売主と買主の双方が合意(署名)」**しない限り、たとえ契約上明らかに買主に返還されるべきものであっても、独断で返金することはできません。

そこで今回は、理不尽な売主に対して法的なプレッシャーを与え、任意にリリース(返還)への同意を促すための強力な手段について解説します。


カリフォルニア州民法(California Civil Code § 1057.3)では、正当な権利を持つ当事者に対して、他方の当事者が**「不誠実(Bad Faith)」**にデポジットの返還を拒否した場合のペナルティを定めています。

売主が正当な理由なく、デポジットのリリース(Cancellation Instructions)への署名を拒み続けた場合、売主は以下の支払いを命じられるリスクを負います。

  1. 実際の損害額(デポジット全額および利息など)
  2. 1,000ドルの民事ペナルティ
  3. 弁護士費用(Reasonable Attorney’s Fees)

特に「弁護士費用も請求される可能性がある」という点は、理不尽な抵抗を続ける売主にとって大きな脅威(プレッシャー)となります。

では、実際にどのような手順で売主にプレッシャーをかけ、デポジットを取り戻すのか、そのフローを解説します。

1. 正当な解除であることの再確認

まず前提として、契約上の「Contingency(条件条項)」期間内であるか、あるいは売主の契約違反など、買主側にデポジット全額返還の権利が確実にあることを確認します。

2. 30日間の通知(Notice)を送付する

いきなり訴訟を起こすわけではありません。法律上、まずは「所定の通知」を行う必要があります。

  • 内容: エスクローにある資金の返還を求める正式な要求書を作成します。
  • 警告: 「この要求書を受け取ってから30日以内にエスクローの解除・返金指示書に署名しない場合、1,000ドルのペナルティおよび弁護士費用を請求する権利を行使します」という文言を明記します。
  • 送付方法: 配達証明付き郵便(Certified Mail)などで、証拠が残る形で売主に送付します。

ポイント:

この「30日ルール」が重要です。多くの「たちの悪い売主」も、この正式なレターを受け取り、弁護士費用やペナルティのリスクを具体的に突きつけられると、裁判になるメリットがないと悟り、この期間内に署名に応じることがほとんどです。

3. 解決しない場合:少額訴訟(Small Claims)または民事訴訟へ

もし30日が経過しても売主が無視、あるいは拒否し続ける場合は、裁判所へ訴えを提起します。

  • 少額訴訟(Small Claims Court): デポジット額が個人の上限(通常$12,500以下※)に収まる場合、弁護士を立てずに自分自身で低コストに訴えることができます。ここで「Bad Faith」が認められれば、デポジット返還に加え、ペナルティ$1,000も認められる可能性が高まります。
  • 通常の民事訴訟: 金額が大きい場合は弁護士を通じて提訴します。

理不尽な売主の対応に、時間と労力を奪われるのは本意ではないでしょう。しかし、相手が感情的になっている場合、単なる「お願い」では解決しないことが多々あります。

法律に基づいた**「ペナルティとコストのリスク」**を冷静かつ書面で提示することが、結果として最も早く、確実にデポジットを取り戻す近道となります。

もし、デポジットの返還トラブルでお困りの際は、相手に通知を送る段階から弁護士にご相談ください。正式なレターヘッドでの通知は、相手に対するプレッシャーの効果をより一層高めます。


※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的アドバイスを構成するものではありません。個別の案件については専門家にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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