カリフォルニアで離婚する日本人が知るべき法律と実務
カリフォルニア州に住む日本人が離婚を検討する際、親権や養育費の問題は避けて通れません。
アメリカ・カリフォルニア州の離婚制度を日本人向けにわかりやすく解説し、親権の種類、養育費の計算方法、ハーグ条約への注意点など、重要なポイントを包括的にまとめています。
カリフォルニア州の離婚と親権:日本とは何が違う?
離婚後の親権は「共同親権」が基本
カリフォルニア州では、離婚後も両親がともに子どもの意思決定に関与する「共同親権(Joint Custody)」が基本的な原則とされています。これは、離婚後にどちらか一方のみが親権を持つ日本の「単独親権制度」とは大きく異なります。
親権は2つの種類に分かれる
- 法的親権(Legal Custody):子どもの教育・医療・宗教などの重大な判断を行う権利
- 物理的親権(Physical Custody):子どもがどちらの親と住むかという実際の生活に関わる権利
多くのケースでは、法的親権は共同、物理的親権はどちらか一方が主要な監護者(Primary Custodial Parent)となります。
養育時間(タイムシェア)が親権と養育費に影響
Parenting Time(養育時間)とは?
カリフォルニア州では、親が子どもと過ごす時間の割合が「タイムシェア」として記録され、親権の判断や養育費の計算に直接影響を与えます。
タイムシェア例:
- 父親65%、母親35%
- 50:50の平等な共同監護
✅ ポイント:この割合は「推奨」ではなく、裁判所の命令として法的効力を持ちます。
国際離婚とハーグ条約:日本への子どもの連れ去りに注意
ハーグ条約とは?
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)は、国境を越えて子どもを一方の親が無断で連れ去ることを防ぐ国際協定です。
日本は2014年に加盟しており、カリフォルニア州での離婚後に日本へ子どもを連れて帰るには、両親の同意または裁判所の許可が必要です。
違反のリスク:
- 子どもの強制返還命令
- 国際手配や刑事責任の可能性
- 親権争いでの不利な評価
⚠️ 片方の親の同意なく日本へ子どもを連れ帰る行為は「国際的な子の拉致」と見なされる可能性があり、極めて深刻です。
養育費(Child Support)の仕組みと計算方法
養育費はどうやって決まる?
カリフォルニア州の養育費は、以下のような要素をもとに州の算定ガイドラインに従って自動計算ソフト(例:DissoMaster®)で算出されます。
主な要因:
- 両親の月収または年収
- 子どもと過ごす時間(タイムシェア)
- 税金控除・保険料・保育費などの経費
養育時間が養育費に与える影響
養育費は「親の収入」だけでなく、「子どもと過ごす時間」にも左右されます。
- タイムシェアが少ない親(例:20%)は、より多くの養育費を支払う傾向
- 50:50で親権を分け合っていても、収入差がある場合は高収入の親が支払い義務を負う場合があります
養育計画(Parenting Plan)の重要性と法的義務
離婚後は、裁判所の命令または合意に基づく「養育計画(Parenting Plan)」を作成し、それに従うことが義務となります。
養育計画で求められること:
- 指定された日時での子どもの受け渡し
- 合意なしのスケジュール変更禁止
- 実際に定められた時間を子どもと過ごす責任
違反するとどうなる?
- 裁判所侮辱罪(Contempt of Court)に問われる
- 親権の見直しや減少のリスク
- 子どもの最善の利益に反すると判断される可能性
日本人がカリフォルニアで離婚する際のチェックリスト
- ✅ 共同親権が基本(ただし例外あり)
- ✅ 子どもとの時間が養育費を左右
- ✅ ハーグ条約違反に注意:勝手な帰国は違法
- ✅ 裁判所命令を厳守:違反は重大なペナルティ
- ✅ 専門弁護士に相談が必須
法的アドバイスを受けることの重要性
国際離婚や親権に関わる問題は非常に複雑で、誤解や認識違いによるトラブルも多発しています。
カリフォルニア州法と国際法に精通した家族法弁護士に相談することが、最善の解決への第一歩です。
🔒 免責事項:
本記事は情報提供のみを目的としており、法律上の助言を構成するものではありません。ご自身のケースについては、必ず資格を有する弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和