カリフォルニア州で日本人がレストランビジネスを始めるには、複数のステップと法的要件を理解する必要があります。このガイドでは、会社設立からビザ取得、営業許可、従業員の雇用まで、重要なポイントを網羅的に解説します。
会社設立の手順
1. 事業形態の選択
- 個人事業主(Sole Proprietorship)
- 有限責任会社(LLC:Limited Liability Company)
- 株式会社(Corporation):C Corporation または S Corporation
レストラン事業には、LLCまたはCorporationの設立が一般的です。LLCは設立手続きが比較的簡便で、個人資産の保護も可能です。
2. 会社名の登録
- カリフォルニア州務長官のウェブサイトで会社名の使用可否を確認
- 名称予約申請書(任意)を提出
- DBA(Doing Business As)名で営業する場合は郡レベル(county)で商号登録が必要
3. 設立書類の提出
- LLC:Articles of Organization(Form LLC-1)
- Corporation:Articles of Incorporation(Form ARTS-GSなど)
- 提出先:カリフォルニア州務長官
4. EIN(連邦雇用者識別番号)の取得
IRSのウェブサイトからオンラインで無料申請可能。銀行口座開設、従業員雇用、税務申告に必要です。
5. 運営合意書・定款の作成
- LLC:Operating Agreement(実務上必須)
- Corporation:Bylaws
ビザの取得
1. 主なビザの種類
E-2投資家ビザ
- 日本は条約国のため申請可能
- 通常 $200,000 以上の投資が望ましい
- 雇用創出の計画が必要
- 最長5年、更新可能
L-1ビザ
- 日本の親会社からの出向
- 過去3年のうち1年以上の勤務歴が必要
- L-1A:経営者・管理職、L-1B:専門知識保持者
EB-5投資家ビザ
- 最低 $800,000 ~ $1,050,000 の投資
- 10人以上の雇用創出が必要
2. ビザ申請に必要な書類
- 事業計画書(市場分析、財務予測など)
- 投資資金の証明
- 経営経験や能力を証明する資料
- パスポート、設立証明書、税関連書類
3. 申請プロセス
- USCISへの申請
- 承認後、大使館または領事館でのビザ面接
- 取得まで数ヶ月かかる場合がある
レストラン特有の許認可
1. 保健所の許可
- Environmental Health Department へ申請
- 施設設計図と現地検査
- Certified Food Protection Managerの配置
2. アルコール販売免許
- California Department of Alcoholic Beverage Control(ABC)に申請
- ゾーニング規制により制限あり
3. その他の許可
- 営業許可(Business License)
- 看板許可(Sign Permit)
- 消防署の安全検査
従業員の雇用
1. 雇用法の遵守
- カリフォルニア州最低賃金:$16.00/時以上(地域によって異なる)
- 時間外労働:1.5倍の賃金
- 休憩と食事休憩の提供義務
2. 就労資格の確認
- I-9フォームの提出と保管
- E-Verifyの利用(任意)
3. 保険の整備
- 労災保険(必須)
- 失業保険(雇用主負担)
- 障害保険(従業員負担)
- 従業員50人以上の場合、健康保険提供義務
4. 給与税の管理
- 連邦・州所得税の源泉徴収
- 社会保障税・メディケア税(FICA)
- 給与明細とW-2フォームの発行
就業規則の整備
1. 従業員ハンドブック
- 行動規範、労働時間、福利厚生、懲戒処分の手順など
2. 必須掲示物
- 労働者の権利に関するポスター(DIRより)
- 最低賃金・差別禁止・労災情報など
3. 記録保持義務
- 勤務時間・給与記録:最低3年間
- I-9フォーム:雇用終了後1年間または雇用開始後3年間のうち長い方
日本人経営者が特に注意すべき点
1. 雇用文化の違い
- アメリカは「雇用は自由意思(At-will)」が原則
- 不当解雇や差別的解雇は禁止 (解雇は慎重にしないと訴訟に発展する可能性)
2. 言語面の配慮
- 英語での契約・従業員対応が必須
3. 資金調達の課題
- 信用履歴がないため融資が難しい
- 送金規制・為替リスクにも注意
まとめ
カリフォルニアでレストランを開業するには多くの法的・実務的な準備が必要です。会社設立、ビザ取得、許認可取得、労務管理などの各ステップで、経験豊富な専門家のアドバイスを受けることが成功への鍵となります。
弊事務所では、日本語と英語でのバイリンガル法務サポートを提供し、日本人経営者によるスムーズなビジネス立ち上げを全面的に支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和