カリフォルニアでビジネスを始めるにあたり、最初に直面する重要な判断の一つが「会社形態の選択」です。この選択は、税務、法的責任、経営の柔軟性、そして将来的な成長計画に直結します。
カリフォルニア州で一般的な二つの会社形態「LLC(有限責任会社)」と「Corporation(株式会社)」について、メリット・デメリットの比較、そしてLLCからCorporationへの切り替え手続まで、解説します。
目次
- LLCとCorporationの基本的な違い
- LLCのメリット・デメリット
- Corporationのメリット・デメリット
- どちらが自分のビジネスに適しているか?
- LLCからCorporationへの切り替え方法
- S Corporationとは?
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. LLCとCorporationの基本的な違い
比較項目 | LLC | Corporation |
---|---|---|
法的地位 | 独立した法人格 | 独立した法人格 |
所有者 | メンバー | 株主 |
課税形態 | パススルー課税 | 二重課税 |
管理体制 | 柔軟 | 形式的 |
書類要件 | 簡素 | 厳格 |
2. LLCのメリット・デメリット
メリット
- 有限責任:個人資産は保護される
- パススルー課税で法人税が不要
- 取締役会不要で管理が柔軟
- 利益配分も契約で自由に決定可能
- 設立・維持コストが比較的低い
デメリット
- VCからの出資を受けにくい
- 株式オプションが使いにくい
- 自己雇用税がかかる場合がある
3. Corporationのメリット・デメリット
メリット
- 有限責任と法的保護が強い
- 株式発行により資金調達がしやすい
- 株式移転が簡単
- 会社の永続性が高い
デメリット
- 法人税と配当の二重課税
- 設立や運営コストが高い
- 取締役会や定期報告の義務がある
- 経営の自由度が低い
- 情報公開義務が広い
4. どちらが自分のビジネスに適しているか?
条件 | 推奨形態 |
---|---|
少人数で起業 | LLC |
柔軟な利益配分を希望 | LLC |
投資・IPOを視野に入れている | Corporation |
株式オプションを活用したい | Corporation |
他州・海外への展開 | Corporation |
5. LLCからCorporationへの切り替え方法
方法1:法定転換(Statutory Conversion)
- LLCメンバーによる承認
- 転換計画(Conversion Plan)の作成
- 「Certificate of Conversion」の提出
- 「Articles of Incorporation」の提出
- 社内規程・定款の作成
- 新たなEINの取得または更新
- 銀行口座・契約等の更新
方法2:資産移転(Asset Transfer)
新Corporationを設立してLLCから資産を移す方法。税金や手間が増すため慎重に検討を。
方法3:定款変更
※カリフォルニア州では不可
6. S Corporationとは?
S Corporationは課税上の選択であり、LLCまたはCorporationがIRSに届け出を行うことで選択可能です。
特徴
- 法人税を回避できるパススルー課税
- 自己雇用税を節税できる可能性
- 株主数・居住地などに制限あり
7. よくある質問(FAQ)
LLMからCorportionへの転換において
Q1:EINは引き継げる?
→ 法定転換であれば可能な場合が多い。
Q2:事業は継続できる?
→ 可能。特に法定転換では中断なし。
Q3:契約関係に影響は?
→ 通常は自動引継ぎだが、要確認。
Q4:いつ変更するべき?
→ 会計年度末のタイミングが手間が少ないが、原則いつでも可能。
8. まとめ
LLCとCorporationの選択は、ビジネスの成長性や投資計画によって選択が異なります。
まずは小規模・柔軟な経営を優先するならLLC。資金調達や成長を視野に入れるならCorporation。
また、必要に応じて後から形態変更も可能です。事前に専門家への相談をお勧めします。
※本記事は情報提供を目的としており、法律上の助言ではありません。正確な対応は弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和