田中良和国際法律事務所

カリフォルニア州における夫婦間の不動産贈与:手続・Deedの種類・税務上の取り扱い

カリフォルニア州では、配偶者間での不動産の贈与や譲渡は比較的簡単に行うことができ、税務上の恩恵も多く認められています。夫婦間で不動産を贈与または譲渡する際の法的手続き・使用されるDeed(権利証書)・課税関係について、カリフォルニア州法に基づき説明します。


夫婦間の不動産贈与には、以下のような形があります:

  • 一方が単独で所有していた不動産の全部または一部を、配偶者に贈与する
  • 共同名義(Joint TenancyまたはCommunity Property)で保有していた不動産を、一方の単独名義に変更する

どちらのケースも「贈与」に該当し、Deed(権利証書)を通じて所有権の変更が記録されます。


夫婦が共同名義で所有している不動産(たとえば、Joint TenancyやCommunity Propertyとして記録されている不動産)を、配偶者の一方に譲渡することも可能です。

たとえば、離婚や資産整理、遺産計画(Estate Planning)の一環として、夫婦の一方が他方の配偶者に自分の持分を譲渡するケースが典型です。

この場合、以下のようなDeedを使って持分を譲渡します:

  • Quitclaim Deed:保証なしで権利を放棄するシンプルな形式
  • Interspousal Transfer Deed:配偶者間譲渡に特化しており、税務上の免除を明確に示すことができる

① Quitclaim Deed(クイットクレーム・ディード)

  • 保証なしで権利を放棄するシンプルな形式
  • 不動産の贈与において、特に夫婦間の信頼関係がある場合に多く使用されます
  • 書式も簡潔で、記録コストが比較的低いのが特徴

② Interspousal Transfer Deed(配偶者間譲渡証書)

  • カリフォルニア州で用意されている配偶者間譲渡専用のDeed
  • 税務上の再評価(固定資産税)や譲渡税の免除の理由が明記できる
  • 離婚・婚姻中の財産調整、贈与などに最適

③ Grant Deed(グラント・ディード)

  • 所有権が確かであることをある程度保証しつつ譲渡する形式
  • 贈与でも使用できますが、夫婦間贈与では他の形式より一般的ではありません

作成したDeedは、以下の手順で公的に記録(Record)する必要があります:

  1. 該当カウンティのRecorder’s Office(登記所)に提出
  2. Preliminary Change of Ownership Report(PCOR)の提出
  • 所有権変更の理由(例:夫婦間の譲渡)を記載
  • 税務上の再評価の免除を申請

① 贈与税(Gift Tax)

  • 米国市民の配偶者間では、連邦贈与税は無制限に非課税(Unlimited Marital Deduction)
  • したがって、贈与額がいくらであっても課税されません
  • ただし、贈与を受ける配偶者が非米国市民の場合、年間約185,000ドル(2025年時点)の非課税限度があります

② 固定資産税(Property Tax)再評価の免除

  • カリフォルニア州のProposition 13により、不動産の評価額は一定条件でしか再評価されません
  • 夫婦間の譲渡(包括共同財産内の移転)は再評価の対象外
  • PCORを提出し、「Spouse-to-Spouse Transfer」として申請することで免除が認められます

③ 不動産譲渡税(Transfer Tax)

  • カリフォルニアでは多くの市・郡でTransfer Tax(譲渡税)が課されます
  • しかし、夫婦間の譲渡・贈与(無償移転)には課税されないことが一般的
  • Interspousal Transfer Deedを使用することで免除理由が明記され、トラブルを避けられます

  • Deedの記載ミスや誤解を避けるため、弁護士等のサポートを受けることを推奨します
  • 特に共有持分の譲渡や過去の担保設定がある不動産では、専門的な確認が重要です
  • 将来の相続や財産分割のトラブルを防ぐため、贈与後の名義・登記の状況を明確に把握しておきましょう

項目内容
使用するDeedQuitclaim Deed または Interspousal Transfer Deed
記録手続Recorder’s Officeで記録+PCOR提出
贈与税米国市民間であれば非課税(Unlimited Marital Deduction)
固定資産税再評価免除(Prop 13)適用あり
譲渡税原則として非課税(免除申請要)

離婚時に、夫婦の一方が他方へ持分を譲渡する場面でも、上記と同じようなDeedと手続き使われます。Interspousal Transfer Deedは、こうした法的明確性が求められる場面で有効です。


【免責事項】

本記事は、カリフォルニア州の法律に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の法的助言を提供するものではなく、読者の特定の事案に対する判断を代替するものではありません。不動産の譲渡や贈与に関して具体的な判断・手続きを行う際は、カリフォルニア州の弁護士や税理士など、資格を有する専門家にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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