離婚は精神的にも時間的にも大変な作業です。特に子供がいる場合、養育費(Child Support)と配偶者扶養料(Spousal Support/Alimony)の問題は複雑になりがちです。カリフォルニア州では、これらの支払いは特定の法律と計算式に基づいて決定されます。この記事では、カリフォルニア州における養育費と配偶者扶養料の算定方法について詳しく解説します。
目次
- 養育費(Child Support)とは
- カリフォルニア州における養育費の算定方法
- 配偶者扶養料(Spousal Support)とは
- カリフォルニア州における配偶者扶養料の算定方法
- よくある質問
- 専門家に相談する重要性
1.養育費とは
養育費(Child Support)は、子供の養育に関する経済的責任を両親が分担するために設けられた制度です。離婚後も、両親は子供の生活費、教育費、医療費などを支援する法的義務があります。
養育費が含むもの
• 基本的な生活費(食事、衣類、住居)
• 医療保険と医療費
• 教育費
• 子供のレクリエーション活動
• 交通費
• 子育てに関するその他の必要経費
2.カリフォルニア州における養育費の算定方法
カリフォルニア州では、「ガイドライン計算式」と呼ばれる数学的公式を使用して養育費を算定します。この公式は家族法第4055条に規定されています。
ガイドライン計算式
カリフォルニア州の養育費計算式は次のとおりです:
CS = K[HN – (H%)(TN)]
ここで:
• CS = 子供一人あたりの養育費の額
• K = 両親の合計所得の一定割合(通常、両親の合計所得の約25%)
• HN = 高所得の親の純所得
• H% = 高所得の親の所得が両親の合計所得に占める割合
• TN = 両親の合計純所得
計算に含まれる主な要素
- 両親の収入: 給与、ボーナス、コミッション、自営業収入、失業給付金など
- 親権と養育時間: 各親が子供と過ごす時間の割合
- 税金控除: 所得税、社会保障税、医療保険料など
- その他の要素:
o 子供の数
o 両親が他の子供を扶養しているかどうか
o 強制的な退職金積立や組合費
o 医療保険料と未補償の医療費
養育費計算ツール
カリフォルニア州司法評議会は、公式のオンライン計算ツール「California Guideline Child Support Calculator」を提供しています。このツールを使用すると、養育費の概算額を計算できます。
修正要因
裁判所は特定の状況において、ガイドラインの金額を調整する場合があります:
• 高所得の親の収入が極めて高い場合
• 子供に特別なニーズがある場合
• 両親間で養育時間が極端に不均衡な場合
• その他、裁判所が「子供の最善の利益」と判断する要因
3.配偶者扶養料とは
配偶者扶養料(Spousal Support/Alimony)は、経済的に依存していた配偶者が離婚後も一定期間、生活水準を維持できるようにするための支払いです。
配偶者扶養料の目的
• 経済的に依存していた配偶者が自立するまでの支援
• 長期間の結婚における貢献の認識
• 結婚中の生活水準維持の支援
4.カリフォルニア州における配偶者扶養料の算定方法
カリフォルニア州の配偶者扶養料は、「一時的扶養料」と「判決後の扶養料」の2種類があります。
一時的扶養料(離婚手続き中)
多くのカリフォルニア州の裁判所では、一時的な配偶者扶養料を計算するために「40%ルール」を使用します:
支払額 = 支払者の純所得の40% – 受取人の純所得の50%
養育費がある場合は、まず養育費を計算し、その後で配偶者扶養料を計算します。
判決後の扶養料(離婚確定後)
判決後の配偶者扶養料については、カリフォルニア州家族法(Family Code)第4320条に基づき、以下の要素を考慮して決定されます:
- 各配偶者の稼得能力と生活水準の維持:結婚中に確立された生活水準を維持するのに十分な収入を各配偶者が得られるかどうか
- 支援を求める配偶者の貢献:相手の教育、キャリア、資格取得などに貢献したかどうか
- 支払能力:支払う側の配偶者の能力
- 両当事者のニーズ:結婚中に確立された生活水準に基づく
- 両当事者の義務と資産:別々および共同の資産と負債を含む
- 結婚期間:特に重要な要素で、支援期間に直接影響する
- 就業能力への影響:子育てが支援を求める配偶者の就業能力に与える影響
- 年齢と健康状態:両配偶者の年齢と健康状態
- 家庭内暴力の記録
- 税金への影響:両当事者への税金の影響
- 経済的困難:各当事者の比較的な経済的困難
- 自立の目標:支援を受ける配偶者が合理的な期間内に自立することを目標とする
- 犯罪歴:家庭内暴力や特定の性犯罪の有罪判決
- その他の公正と関連する要素
配偶者扶養料の期間
カリフォルニア州では、結婚期間によって配偶者扶養料の期間が大きく異なります:
• 短期間の結婚(10年未満):一般的に、結婚期間の半分の期間
• 長期間の結婚(10年以上):期間が定められていないことが多く、状況の変化または裁判所命令がない限り継続
5.よくある質問
Q: 養育費と配偶者扶養料は変更できますか?
A: はい、状況の重大な変化(収入の変化、再婚、子供の状況変化など)があれば、裁判所に修正を申請できます。
Q: 失業した場合、支払いはどうなりますか?
A: 失業は状況の変化と見なされることがありますが、自動的に支払義務が停止するわけではありません。すぐに弁護士に相談し、裁判所に修正を申請するべきです。
Q: 配偶者が再婚した場合、配偶者扶養料はどうなりますか?
A: カリフォルニア州では、受取人が再婚すると配偶者扶養料は自動的に終了します。
Q: 養育費の不払いに対する罰則はありますか?
A: はい。給与の差し押さえ、税金還付の差し押さえ、運転免許証の停止、さらには刑事告発の可能性もあります。
6.専門家に相談する重要性
養育費と配偶者扶養料の計算は複雑で、個人の状況によって大きく変わります。以下の理由から、経験豊富な家族法弁護士に相談することをお勧めします:
• 法律は複雑で定期的に変更される
• 個人の財政状況の正確な分析が必要
• 交渉や裁判所での代理が必要な場合がある
免責事項:この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的アドバイスを構成するものではありません。個別の状況については、資格のある弁護士にご相談ください。
この記事の情報は2025年4月時点のものであり、法律の変更により内容が古くなる可能性があります。
カリフォルニア在住(サンフランシスコ・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和