「Declaration(宣誓供述書)は、日本の陳述書や供述書と何が違うのですか?」という質問を受けることがあります。
一見似ているように思えるこの二つの書類ですが、法制度の違いにより、その効力・使われ方・法的責任の重さに違いがあります。カリフォルニア州のDeclarationの法的位置づけを解説したうえで、日本の制度と比較し、両者の本質的な違いを明らかにします。
1. カリフォルニア州の「Declaration(宣誓供述書)」とは?
● 法的根拠と定義
カリフォルニア民事訴訟法第2015.5条(California Code of Civil Procedure § 2015.5)は、宣誓の代わりに“Penalty of Perjury(偽証罪)”に基づく供述文書の使用を認めています。
Declarationは、法廷外で作成される証拠書類の一種であり、一定の要件を満たせば、宣誓証言(sworn testimony)と同等の効力を持つものとして裁判所に提出できます。
● 要件
- 供述者本人が自らの知識に基づいて事実を記載
- 文末に以下の誓約文を明記:
“I declare under penalty of perjury under the laws of the State of California that the foregoing is true and correct.” - 作成日および署名が記載されていること
この形式に従って作成されたDeclarationは、法廷に提出されると証拠能力を持つ文書として扱われます。虚偽記載があれば刑事罰(偽証罪)の対象になります。
● 利用場面
- 民事訴訟(モーションの添付書類、証拠開示に関する陳述など)
- 家族法手続(離婚・親権・DV防止命令申立書への添付)
- 訴状や答弁書の証拠補強
- 宣誓供述書(Affidavit)の代用としての使用
2. 日本の「陳述書」「供述書」とは?
● 法的性質と役割
日本の民事訴訟において「陳述書」や「供述書」は、裁判所に提出する当事者や証人の書面による陳述ですが、法的な効力は限定的です。
通常、これらはあくまで「当事者の主張の補助資料」として扱われ、証拠価値は裁判官の裁量に委ねられます。宣誓や偽証罪の適用は基本的にありません(例外的に供述調書などで宣誓が行われることがあります)。
● 特徴
- 宣誓は不要
- 書式の自由度が高く、様式に厳格な法的要件はない
- 内容の真実性については裁判所の判断に委ねられる
- 偽証罪などの明確な法的リスクは伴わない
- 証拠価値は相対的で、尋問との整合性などが重要
3. カリフォルニアと日本の比較表
項目 | カリフォルニア:Declaration | 日本:陳述書・供述書 |
---|---|---|
宣誓の必要性 | Penalty of perjury 文言で代替可 | 不要(原則) |
法的効力 | 宣誓証言と同等の効力 | 主張書面としての位置付け |
偽証罪の対象か | 対象(虚偽記載で偽証罪) | 通常は対象外 |
書式の厳格性 | 明確な法定文言あり | 自由(裁判所により様式差異あり) |
裁判所での取り扱い | 正式な証拠文書 | 参考資料として裁量的に考慮 |
4. なぜこの違いが重要なのか?
日本の陳述書は、裁判所が内容を「考慮」するにとどまりますが、カリフォルニア州ではDeclarationは証拠そのものとして取り扱われるため、適切な形式を欠いた文書は無効とされることもあります。
さらに、Declarationの記載内容に誤りや虚偽があった場合、偽証罪として刑事責任を問われることもあるため、記載内容には慎重な注意が必要です。
まとめ:書式と制度の理解が大事
国際的な法的手続においては、書式の正確性と制度の理解が大事です。日本式の感覚で陳述書を作成して提出してしまうと、カリフォルニアの裁判では通用しない恐れもあります。
Declarationの作成や提出の際は、現地の制度に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、特定の事案についての法的助言ではありません。具体的なご相談は、必ず弁護士などの専門家にご確認ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和