(相談)
日本人の夫がカリフォルニアに不動産を持っていましたが、先日他界しました。妻と一人の子がいますが、誰が相続人になりますか。カリフォルニアの不動産をどのようにして売却すればいいですか。
(回答)
1.適用される法律
- 国際相続の基本原則:日本の民法が適用される理由
法の適用範囲(法例第36条)
日本国籍を持つ被相続人の相続は、原則として日本民法が適用されます。ただし、不動産の物権変動手続き(名義変更・売却)は、所在地法であるカリフォルニア州法に従う必要があります。
→ 「相続分の決定」は日本民法、「不動産登記手続」は現地法が優先。
日本の法定相続分
• 配偶者と子が相続人の場合:
配偶者1/2、子1/2(子が複数いる場合は均等分割)。
※カリフォルニア州法との違い:州法では「子2人以上→配偶者1/3」だが、日本法では配偶者の取り分が大きく保護。
- 日本の遺産分割協議書の現地効力と限界
日本の手続完了後の課題 - 遺産分割協議書の作成:
日本の法務局で「法定相続情報一覧図」を取得。遺産分割協議書を作成することも。 - カリフォルニア州での効力:
遺産管理人(Administrator)の選任が必須。法定相続情報一覧図や遺産分割協議書のみでは不動産売却不可。
実務上の対応策
カリフォルニア州の裁判所でProbate手続を実施し、administratorを選任し、裁判所の許可を得て不動産を売却
2.Probate手続の流れ
ステップ①:遺産管理人(Administrator)の選任
申請者:日本の配偶者または子が現地裁判所に申請可能。
必要書類:
死亡証明書 もしあれば
相続人リスト(戸籍謄本等)
遺産分割協議書 もしあれば
ステップ②:遺産管理人による不動産売却
裁判所の許可取得:
日本の相続分を提示し、売却計画を申請(例:「配偶者1/2、子1/2」に基づく分配を明示)。
売却益の分配:
売却代金から費用を控除後、日本民法の相続分に従って送金。
注意点
二重手続きの非効率性:
日本と米国で別々に手続きが必要なため、手間と時間かかる
現地弁護士の役割:
カリフォルニアの裁判所を通じて、administratorを選任してもらう手続は、現地弁護士に任せましょう
3.税務上の取扱い(日米それぞれの課税)
日本側の相続税
• 課税対象:カリフォルニア不動産を含む全世界資産。
• 評価方法:相続開始時の現地時価(米国鑑定士の評価書が必要)。
• 米国遺産税との調整:
日米租税条約により、米国で支払った税金は日本相続税から控除可能。
米国側の課税
• 連邦遺産税:
非居住者は6万ドル控除のみ。1ドル超から40%課税。ただし、日本で相続税を支払えば条約で二重課税回避可能。
• キャピタルゲイン税:
売却益に15~20%課税
4.効率的な解決策:日米専門家チームの活用
必須の専門家
国際相続に詳しい日本弁護士:
日本の相続法とカリフォルニア法の両方を理解している弁護士に相談するのがベスト
カリフォルニア州Probate弁護士:
カリフォルニアのProbate手続はカリフォルニア弁護士に依頼
日米税理士:
相続税・キャピタルゲイン税の申告を一元管理。
5.まとめ:日本民法の相続分を現地で実現するには
カリフォルニア不動産の売却には、「日本での相続法」と「現地Probate手続」の両方が不可欠です。早期に日本弁護士とカリフォルニア弁護士と連携しましょう。
相続人が日本人で、カリフォルニアに相続財産がある場合、日本弁護士の資格とカリフォルニア弁護士の資格の両方を持っている弁護士に相談するのがベスト!
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和