ターゲットレターとは?
ターゲットレター(Target Letter)は、日本人には耳慣れない単語だと思います。初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。ターゲットレターは、米国連邦検察官が、刑事事件の「ターゲット」とされた個人に対して送付する正式な通知文書です。このレターは、当該人物が起訴される可能性のある捜査対象であることを明確に伝える役割を担っています。
「ターゲット」とは、検察が起訴を真剣に検討している人物を指します。
ターゲットレターの法的根拠と背景
ターゲットレターは、法的に義務付けられた文書ではなく、米国司法省の実務的ガイドラインに基づくものです。以下のような根拠が存在します:
- 米国司法省マニュアル(Justice Manual)9-11.151:検察官は、大陪審への出頭前に「ターゲット」であることを通知することが望ましいとされます。
- 憲法上のデュープロセス原則:通知と公平手続きのために発行されます(憲法修正第5条、第14条)。
- 判例法における慣行:法的防御の機会を保障する重要な手続の一部とみなされています。
日本の刑事手続との違い
日本の法制度では、捜査初期段階での公式通知制度は存在せず、逮捕や家宅捜索を受けるまで自身が捜査対象であることを知らされないのが一般的です。
一方で、米国では早期に通知が行われることが多く、日本企業や在米邦人が注意すべき制度上の相違点です。
ターゲットレターの目的
この文書には以下のような複数の重要な目的があります:
- 通知機能:捜査対象であることを公式に伝える。
- 協力を促す:司法取引の可能性や情報提供を促進。
- 法的防御の準備:弁護士選任や証拠保全を可能に。
- 透明性の確保:手続の公正性を保証。
- 自己負罪の防止:黙秘権の明示により、誤認供述を回避。
ターゲットレターを受け取ったらどうすべきか?
即時に弁護士に相談することが最優先です。以下の点を特に意識してください:
- 黙秘権の行使(憲法修正第5条)
- 証拠の保存:データ削除・改ざんは違法行為となり得ます。
- 弁護士との連携:迅速な防御を構築しましょう。
ターゲットレターと召喚状の違い
しばしば混同されがちですが、以下のような明確な違いがあります:
- ターゲットレター:捜査対象であることの通知。
- 大陪審召喚状(Grand Jury Subpoena):証言や証拠提出を求める命令書であり、必ずしも被疑者であることを意味しません。
カリフォルニア州における法的防御戦略
カリフォルニア州での連邦刑事事件対応においては、州法・連邦法双方に精通した弁護士の早期関与が鍵です。主な戦略は以下の通りです:
- プリインダイクトメント交渉(起訴前の交渉)
- 証拠開示や証人対策の準備
- 起訴回避・司法取引の検討
まとめ
ターゲットレターを受け取ったら、捜査機関が犯罪として起訴する対象として真剣に検討していることを示しています。もしターゲットレターを受取ったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
田中良和国際法律事務所では、連邦刑事事件について、包括的な法的支援をご提供しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的なケースについては、資格を持つ弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和