田中良和国際法律事務所

カリフォルニア州の法的紛争で「相手に弁護士がついたら、本人に直接連絡しない」理由と根拠条文(Rule 4.2)

カリフォルニアの訴訟・交渉・クレーム対応など、法的紛争の場面では「相手方に弁護士が就いた(represented)」と分かった時点で、相手本人に“直接”連絡するのは原則としてNGです。連絡すべき相手は**相手方代理人(相手の弁護士)**になります。これは礼儀の問題というより、弁護士倫理規程(プロフェッショナル・ルール)の中核ルールとして明確に定められています。


**根拠の中心条文は、カリフォルニア弁護士職務規程(California Rules of Professional Conduct)の Rule 4.2(Communication with a Represented Person)**です。

Rule 4.2(a)(基本ルール)

要旨は次のとおりです:

  • 弁護士は、ある件(matter)について相手が弁護士に代理されていると知っている場合、その件の主題(subject of the representation)について
    直接または間接に相手本人と連絡してはならない
  • 例外は、**相手方弁護士の同意(consent)**がある場合

ここで重要なのは「直接」だけでなく「間接」も禁止されている点です。たとえば、自分のクライアントや調査員を“使って”相手本人に伝言させるなども問題になり得ます(“indirectly”)。


現場で多いのがこのパターンです:

相手本人から電話・メールが来た。相手弁護士を通すべき?

答え:原則として、弁護士はそのまま実質協議を続けるべきではありません。
Rule 4.2のコメント[1]は、相手本人が連絡を開始したり、同意しているように見えても適用される趣旨を明記しています。

実務的には、最低限の事務連絡にとどめて、**「代理人(あなたの弁護士)を通してください」**と案内し、相手方代理人へ連絡する運用が安全です。


基本はシンプルで、弁護士側が

  • その人が当該件で弁護士に代理されていることを知っている(knows)

なら Rule 4.2 が作動します。
実務上は、相手から「代理人がいる」と告げられたり、署名欄・レターヘッド・裁判書面で確認できた時点で「知っている」状態になりやすいです。


Rule 4.2 には例外もあります。代表例は:

  • 公的機関の公職者・委員会等へのコミュニケーション(一定の場合)
  • 法律または裁判所命令で許されている連絡

ただし、この「authorized by law / court order」は便利な抜け道ではなく、根拠が明確な場合に限って慎重に検討すべき領域です(実務ではトラブルの種になりやすいので要注意)。


相手が法人・団体(会社、LLC、行政機関など)だと、さらに注意が必要です。Rule 4.2(b) は、法人が代理人を立てている場合に、一定の関係者への接触を禁止します。典型は:

  • 現職の officer / director / partner / managing agent
  • その件に関与し、行為が法人に帰属し得る現職従業員等(責任の帰属・推認に関わる人)

「現場担当者ならいいだろう」と思って連絡すると、相手が represented organization だった場合に一気に倫理問題化することがあります。


Rule 4.2 のコメント[3]は重要な整理をしています。

  • 当事者(represented persons)同士が直接やり取りすること自体は、Rule 4.2 は禁止しない
  • ただし、弁護士が**間接連絡(代理人・調査員・自分のクライアントを使った接触)**として設計してしまうと危険

つまり、弁護士としては「クライアント同士が勝手に話す」ことまで全面的に縛るルールではない一方、弁護士がそれを誘導・設計して“抜け道”にすると問題になり得ます。


実務でよくあるNG例(分かりやすい具体例)

  • 相手方に弁護士がついた後、相手本人に「和解案」をSMSで送る
  • 「相手が返信してきたからOK」と、そのまま条件交渉を続ける
  • 自分のクライアントに「この内容を相手に伝えて」と言って、交渉の実体を本人間で進めさせる(状況によっては“indirect”の問題)

どう運用するのが安全?(チェックリスト)

  1. 相手に代理人がついたら、連絡先を相手弁護士に一本化
  2. 相手本人から来た連絡には、実体協議に入らず「代理人を通してください」と案内
  3. 法人相手では、誰が“管理職・帰属対象”に当たるかを慎重に整理(Rule 4.2(b))
  4. 「authorized by law」例外に頼る前に、根拠とリスクを必ず検討

Rule 4.2 は、相手方本人が不利な立場で直接説得されたり、代理人関係が骨抜きになったりすることを防ぐための、いわゆる “no-contact rule”です。実務上も、ここを外すと相手方弁護士からの強い抗議だけでなく、状況次第で裁判所での争点化や州弁護士会への申立てに発展し得ます。


参考(根拠)

  • State Bar of California制定 California Rules of Professional Conduct, Rule 4.2(条文・コメント)
  • 実務的な解説(OC Bar)—コメント[3]等の読み方

免責(ディスクレーマー)

本記事は、カリフォルニア州の弁護士倫理規程(Rule 4.2)に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の状況により結論が変わり得ますので、具体的な案件については、事実関係を踏まえて弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、サンフランシスコ)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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