カリフォルニア州の離婚の際に、親権は100%欲しい、というご相談がよくあります。
ただ、カリフォルニア州で親権という場合は、二種類の親権があり、親権という場合にどちらを指すのか、よく考えなければいけません。
法的親権と物理的親権があり、通常子供が母親に親近感を感じているので、母親が親権を持ちたいという場合の親権は、物理的親権を指します。物理的親権はどちらの親と一緒に生活するかを決めます。
それに対して、子供の教育などについて判断する親権というのがあり、こちらは法的親権といいます。法的親権は通常共同親権であり、単独親権が認められるには特殊な事情が必要になります。また、親権を100%欲しいという場合でも、法的親権まで100%欲しい、とまでは考えていないケースもあります。
カリフォルニア州の親権について、考えていきます。
カリフォルニア州の親権制度の基本
カリフォルニア州では、親権(child custody)は「子どもの最善の利益(best interests of the child)」を最も重視して決定されます。
親権には主に**法的親権(Legal Custody)と物理的親権(Physical Custody)**の2種類があります。
親権の種類
1. 法的親権(Legal Custody)
子どもの教育、医療、宗教、生活方針などの重要事項を決定する権限です。
- 共同法的親権(Joint Legal Custody):両親が共同で意思決定を行います。
- 単独法的親権(Sole Legal Custody):一方の親のみが重要事項を決定します(DV・薬物問題などがある場合)。
2. 物理的親権(Physical Custody)
子どもがどちらの親と主に生活するかを定めます。
- 共同監護(Joint Physical Custody):両親が実際の養育時間をほぼ均等に分け合います。
- 単独監護(Sole Physical Custody):子どもが主に一方の親のもとで生活し、他方は面会権(visitation)を持ちます。
親権の判断基準(Best Interest of the Child)
裁判所は、子どもの「最善の利益」に基づいて親権を判断します。主な考慮要素は次の通りです(California Family Code §3011, §3020)。
- 子どもの健康・安全・福祉
- 家庭内暴力(Domestic Violence)の有無
- 親の精神的・身体的健康状態
- 子どもの年齢・性別・希望(成熟している場合)
- 各親の養育能力や関与度
- 学校・地域社会での安定性
特に家庭内暴力がある場合、加害親の親権・面会は厳しく制限されます。
面会(Visitation)の形態
カリフォルニアの家庭裁判所は、以下のような面会スケジュールを設定します。
- 柔軟面会(Reasonable Visitation):両親の合意に基づく柔軟なスケジュール
- 固定面会(Scheduled Visitation):曜日・時間などを明確に設定
- 監視付き面会(Supervised Visitation):第三者の立会いが必要な場合
- 面会なし(No Visitation):子どもの安全に重大なリスクがある場合
親権の変更(Modification)
一度決まった親権・面会の命令でも、**「事情変更(change in circumstances)」**がある場合は、変更を求めることができます。
例:
- 親の転居(relocation)
- 新たなDV・薬物問題の発覚
- 子どもの環境の悪化 など
手続きの流れ
- **親権・養育費申立書(Petition for Custody and Support)**を家庭裁判所へ提出
- **親権調停(Child Custody Recommending Counseling / Mediation)**を受ける
- 合意に至らない場合は、裁判所が判断(court hearing)
まとめ表
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 判断基準 | 子どもの最善の利益 |
| 親権の種類 | 法的親権・物理的親権 |
| 原則 | 共同親権(Joint Custody) |
| 例外 | DV・薬物問題などがある場合 |
| 面会形態 | 柔軟・固定・監視付き・なし |
| 変更条件 | 事情変更がある場合 |
親権争いは感情的になりやすく、冷静な法的判断が必要です。
カリフォルニアでは、裁判所は「親の権利」よりも「子どもの安定と幸福」を最優先します。
親権・面会スケジュールの作成や変更を検討する際は、家族法に精通した弁護士の助言を受けることが重要です。
免責事項(Disclaimer)
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。
個別のケースについては、カリフォルニア州の家族法弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
