田中良和国際法律事務所

カリフォルニア州の陪審員制度とは?

~市民が司法に参加するしくみを詳しく解説~

カリフォルニア州では、刑事・民事を問わず、多くの裁判において「陪審員制度(Jury System)」が採用されています。陪審員制度は、一般市民が司法に参加する重要な制度であり、裁判の公正さを担保する役割を果たします。今回は、カリフォルニア州における陪審員制度の基本構造、選任手続、役割、義務、そして実務上のポイントについて詳しく解説します。

カリフォルニア州の裁判制度では、次の2種類の陪審が存在します。

  • 大陪審(Grand Jury):刑事事件の起訴を判断するための制度で、秘密裏に行われます。民間人によって構成され、刑事訴追にふさわしいかを判断します。
  • 小陪審(Trial JuryまたはPetit Jury):裁判における事実認定を行うために選ばれる陪審で、通常はこちらが「陪審員制度」として理解されています。

この記事では、主に小陪審(Trial Jury)に焦点を当てて解説します。

刑事事件の場合:

  • 陪審員は12人で構成されます。
  • 有罪評決には全員一致の同意が必要です(カリフォルニア州刑事訴訟法 第1163条など)。

民事事件の場合:

  • 通常は12人ですが、最低6人まで合意のもとで減員が可能です。
  • 評決には3/4以上の多数決で決定することができます(Code of Civil Procedure §618)。

陪審員は、以下の手順で選ばれます。

  1. 無作為抽出(Random Selection):選挙人名簿や運転免許情報などから無作為に選ばれた市民に召喚状(jury summons)が送付されます。
  2. 予備審問(Voir Dire):裁判官および弁護士が、候補者の公平性や偏見の有無について質問を行い、適格な陪審員を選別します。
  3. 除斥(Challenges):不適格と判断された候補者は「理由付き除斥(for cause)」や「無理由除斥(peremptory challenge)」により除外されます。

義務:

  • 出頭義務:召喚状を受け取った市民は、正当な理由がない限り出頭義務を負います。
  • 誠実な審理:偏見や先入観なく証拠に基づいて判断を行う義務があります。

報酬:

  • 通常、陪審員には1日あたり$15〜$50程度の報酬と交通費(1マイルあたり$0.34)が支払われます(カウンティによって異なる)。
  • 初日を除き、雇用主からの給与保証がない場合は補償があります。

カリフォルニア州の陪審員制度は、司法制度の「民主的正統性」を担保するものです。一般市民が判断に加わることで、法の支配に市民の視点が反映され、公正な判断がなされる可能性が高まります。

また、陪審員制度は弁護士の訴訟戦略にも大きな影響を与えます。特に証拠提示や冒頭陳述・結審陳述において、陪審員に対する「説得力ある説明」が極めて重要になります。

もしカリフォルニア州で陪審員召喚状を受け取った場合、以下の点に留意してください。

  • 通知された期日に出頭すること。
  • 裁判所の指示に従うこと。
  • 勤務先に報告し、必要であれば証明書を取得すること。
  • 他者に審理内容を漏らさないこと。


【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の法律問題に対する法的助言ではありません。個別の事案については、カリフォルニア州弁護士などの有資格専門家にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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