田中良和国際法律事務所

カリフォルニア州の離婚における子の養育費・親権・Spousal Support完全ガイド


カリフォルニア州で離婚を検討している方にとって、子の養育費(Child Support)、親権(Custody)、配偶者支援(Spousal Support)は最も重要な関心事項の一つです。カリフォルニア州の家族法に基づき、これらの問題について詳細に解説します。国際結婚や日本人夫婦がカリフォルニアで離婚する際に知っておくべき法律、計算方法、手続の流れを説明します。


カリフォルニア州は「無過失離婚(No Fault Divorce)」を採用しており、離婚理由を問わず、一方の配偶者が婚姻関係の修復が不可能であると主張すれば離婚が認められます。日本と異なり、不貞行為などの「離婚原因」は不要で、慰謝料の概念もありません。そのため、配偶者の浮気が原因で離婚する場合でも、相手から慰謝料を取ることはできません。

また、カリフォルニア州は「共同体財産州(Community Property State)」として知られ、婚姻期間中に取得した財産や負債は原則として夫婦で平等に分割されます。この原則は、Spousal Support(配偶者支援)の算定にも影響を与えます。


共同親権が原則のカリフォルニア州
カリフォルニア州では、離婚後も共同親権(Joint Custody)が原則です。これは「子の最善の利益(The Best Interest of the Child)」を最優先に考え、子供が両親との関係を維持できるようにするためです。

親権は次の2種類に分けられます:

法的親権(Legal Custody):教育、医療、宗教など重要な決定に関する権利
身上監護権(Physical Custody):子供と実際に生活する権利

親権決定のプロセス
親権を争っている場合、家庭裁判所はファミリー・コート・サービスによるカウンセリングを指示します。ここで合意できない場合、カウンセラーが裁判所にレポートを提出し、その内容が判断材料となります。

親権決定で考慮される要素:
子供の健康と安全
各親の養育能力
子供との情緒的結びつき
子供の生活環境の継続性
子供の希望(年齢と成熟度に応じて)
家庭内暴力(DV)の有無

カリフォルニア州の養育費制度の特徴
カリフォルニア州の養育費には以下の特徴があります:

州のガイドラインに基づき算定:収入とタイムシェア(子供と過ごす時間の割合)で計算

DCSS(Department of Child Support Services)による支援:養育費の申立て、取立てまで州がサポート

強制力が強い:未払いの場合、銀行口座差押え、税金還付金没収、運転免許停止などの措置が可能

養育費計算ツールの活用
カリフォルニア州はオンラインで養育費計算機を公開しています。DissoMasterという専門ソフトもあり、収入、支出、子供の人数などを入力すれば自動計算可能です。

養育費算定で考慮される要素:
各親の収入(税引き後)
子供と過ごす時間の割合
子供の人数
特別な医療費や教育費


カリフォルニア州のSpousal Supportの特徴
日本と大きく異なる点が、離婚後もSpousal Support(婚姻費用)の支払いが続くことです。支払期間は婚姻期間に比例します:

婚姻期間10年未満:婚姻期間の半分の期間
婚姻期間10年以上:無期限(但し裁判官の裁量)

Spousal Support決定で考慮される要素
各配偶者の収入能力
婚姻期間中の生活水準
婚姻期間の長さ
各配偶者の年齢と健康状態
受取人が自立するのに必要な時間

管轄権の問題
カリフォルニア州で離婚するには、少なくとも一方が州内に6ヶ月以上、申請郡に3ヶ月以上居住している必要があります。日本人夫婦でもこの条件を満たせばカリフォルニアで離婚可能です。

注意点:親権、養育費、婚姻費用の裁判は、子や配偶者の住所地の裁判所で扱われます

日本とカリフォルニアの両方で管轄が認められる場合、二重に手続が行われる可能性があります。その場合、先の裁判が終わるまで、後の裁判の進行をストップするなど、対応が必要です。

カリフォルニア州の離婚手続きは大まかに以下のステップで進みます:

ステップ1:離婚の申立て
必須書類(FL-100請願書、FL-110召喚状など)を郡の裁判所に提出
第三者を通じて配偶者に書類を送達

ステップ2:財産開示
双方が資産と負債の情報を開示(FL-140開示宣言書など)
提出から60日以内に完了が必要

ステップ3:離婚の確定
相手が無回答の場合:欠席判決(Default Judgment)を申請
相手が同意する場合:婚姻和解契約書(MSA)を作成し裁判所に提出

争いがある場合:調停や裁判で解決

注意点:
申立てから判決まで最低6ヶ月のクーリングオフ期間が必要
子供がいる場合、親権カウンセリングが義務付けられる

Q: カリフォルニア州で離婚後、日本に帰国した場合、養育費はどうなりますか?
A: カリフォルニア州の判決に基づく養育費は、日本でも執行が可能です。

Q: 相手が養育費を払わない場合、どうすればいいですか?
A: DCSSに相談してください。給与差し押さえ、銀行口座差し押さえ、運転免許停止などの措置を取ってくれます。

Q: 共同親権で子供を日本に連れて帰りたいのですが?
A: 相手の同意なしに子供を国外に連れ出すと、子の連れ去りとして、ハーグ条約違反となる可能性があります。事前に配偶者の合意を得るか、裁判所の許可を得てください。

カリフォルニア州の離婚制度は日本と大きく異なり、特に以下の点に注意が必要です:

共同親権が原則で、子供との時間を半分にする覚悟が必要
養育費はガイドラインで自動計算され、強制力が強い
Spousal Supportは離婚後も継続し、婚姻期間が10年以上だと無期限になる可能性も
財産は平等分割が原則で、慰謝料の概念はない

国際結婚や海外在住の日本人夫婦がカリフォルニアで離婚する場合、言語や文化の壁、二国間の法律の違いなど複雑な問題が生じます。特に子供が関わる場合は、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

カリフォルニア州の家族法は「子の最善の利益」を最優先に考えられています。離婚という困難な局面でも、子供が両親の愛を感じながら成長できるよう、感情的にならずに理性的な判断を心がけましょう。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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