カリフォルニア州でビジネスを展開する日本企業にとって、会社設立の場所は重要な意思決定です。特に「カリフォルニア州で設立するべきか、デラウェア州で設立するべきか」という質問は頻繁に寄せられます。
本記事では、両州の法的メリット・デメリットを比較し、「一般的なビジネス」と「将来の上場を視野に入れた場合」に分けて解説します。
1.カリフォルニア州で会社を設立
メリット
- 現地ビジネスとの親和性
o カリフォルニア州内で事業を行う場合、現地法人(C CorporationやLLC)を設立することで、取引先や顧客からの信頼性が向上します。
o 例:オフィスの賃貸契約や銀行口座開設がスムーズに進む。 - コスト面の利点(初期段階)
o デラウェア州と異なり、年次報告書の提出義務が不要(ただし Franchise Tax は年間 $800 が発生)。 - 税務上の簡便さ
o 単一州で事業を行う場合、複数州に跨る税務申告の煩雑さを回避できます。
デメリット
• コーポレート・ガバナンスの制約:取締役の最低人数が 3名 必要(ただし、株主が1名であれば取締役1名、株主が2名であれば取締役2名でよい。デラウェア州は 1名 で可)。
• 将来の上場を意識しているなら、投資家から人気が高いデラウェア州で設立するのがよい
2.デラウェア州で会社を設立
メリット
- 上場(IPO)に向けた柔軟性
・米国上場企業の 60%以上 がデラウェア州法人(Delaware C Corp)。
・ 裁判例の蓄積が豊富で、投資家からの信頼性が高いことが最大の強みです。
- コーポレート・ガバナンスの自由度
・ 取締役の人数制限がなく、1名で設立可能。 - 税務上のメリット(特定条件下)
・ デラウェア州内で収益を生まない場合、法人所得税が非課税。
・ ただしカリフォルニア州で事業を行う場合は、Franchise Tax(年間 $800) と 在外法人税 が発生します。そのため、税務上のメリットはそれほど大きくありません。
デメリット
• 二重の手続コスト:デラウェア州での設立に加え、カリフォルニア州で Foreign Corporation として登録が必要。
• 維持管理の複雑さ:年次報告書の提出や Registered Agent の維持が義務付けられます。
3.ケース別の最適解
ケース1:カリフォルニア州内で小規模ビジネスを展開する場合
• 推奨:カリフォルニア州法人(LLC または C Corp)
理由:現地での信頼性確保と手続の簡便さが優先されます。
ケース2:将来的な上場や資金調達を視野に入れる場合
• 推奨:デラウェア州法人(C Corp)+ カリフォルニア州での Foreign Corporation 登録
理由:投資家が求める法的安定性と柔軟なガバナンス構造を両立できます。
4.実務上のアドバイス
専門家の活用:
・デラウェア州設立時は Registered Agent の利用が必須。
・税務面では 日米両国の税理士 との連携が不可欠です。
・会社の設立手続を弁護士に依頼すると、会社設立後の法律相談も任せられます。
5.まとめ
・カリフォルニア州:現地事業に特化したシンプルな法人設立に最適。
・デラウェア州:上場や大規模資金調達を目指す企業向け。
・日本企業は自社のビジョンに合わせて柔軟に選択しましょう。
・詳細な法的助言が必要な場合は、弊事務所にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和