カリフォルニアで訴訟をしていると、裁判所に書面を「提出」する場面が頻繁に出てきます。ところが提出の動詞が file だったり lodge だったりして、日本の実務感覚だと「どっちも提出では?」となりがちです。結論から言うと、file は“裁判所の記録(court record)として正式に受理・登録する提出”、lodge は“裁判所に一時的に預けるが、まだ正式には filed ではない提出”、という整理が基本です。
1. 「LODGE」は“提出だけど、まだ FILE ではない”
カリフォルニアの裁判規則には、lodged の定義が明確に書かれています。
“A ‘lodged’ record is a record that is temporarily placed or deposited with the court, but not filed.”
(意訳:lodged とは、裁判所に一時的に置く/預けるが、filed ではない記録)
出典:California Rules of Court, rule 2.550(sealed records の定義)
つまり lodge = 一時預け(not filed) が原則です。
2. FILE(ファイル)とは:正式受理・事件記録に入る提出
一般に file は、裁判所のクラーク(Clerk)に提出して受理され、日付スタンプ・登録され、事件のドケット(記録)に載ることを意味します。
- 期限遵守(締切)との関係が強い
- 「提出した」という法的効果(例:申立ての係属、反対書面の期限計算など)が生じる
- 原則として(封印等がない限り)公的な閲覧対象になり得る
3. LODGE(ロッジ)とは:裁判官の検討用に“預ける”提出(未ファイル)
lodge は「裁判所に渡す」点では同じですが、上記のとおり “not filed”(ファイルではない)という位置づけです。
実務的には、次のような性質を持ちます。
- 裁判官が見るため/手続上必要だから提出するが、事件記録としての正式受理とは別扱い
- 提出してもドケットに載らない(載せない)前提のことがある
- 後で裁判所の命令や採用(admit)により、記録化・公開範囲が変わることがある(場面次第)
4. どういう時に LODGE する?(代表例)
「lodge は例外的」と思われがちですが、カリフォルニアでは手続類型ごとに普通に出てきます。
(1) 行政記録(Administrative Record)
行政訴訟系では、行政記録を裁判所に lodge し、当事者に serveする旨が規則に定められています。
→ 記録物が大量・特殊で、通常の “file” とは別運用になりやすい典型です。
(2) 証拠提出の前提としての “lodging”
供述録音(録画)等を証拠として使う前に、供述調書(transcript)を lodgeする必要がある旨が規則に示されています。
→ 「証拠として採用(admit)される前の段階の整備」で lodge が使われることがあります。
(3) 提案命令(Proposed Order)
申立てが通った後、勝訴当事者が **proposed order を裁判所に提出(transmit)**する運用が規則上予定されています。
※郡・部(department)運用で、eFile とは別に “提出方法(PDF+Word等)” が指定されることもあります(例:Los Angeles Superior Court の告知)。
(4) 「Courtesy Copy(部への控え提出)」としての lodge
多くの裁判所・部では、eFile した書面とは別に部(裁判官)宛ての控えを提出する慣行・指示があります。郡のローカルルールで、期日直前に提出した書面について追加コピーを lodgeする運用が定められている例もあります。
※ここは裁判所・部ごとの差が大きいので、必ず該当ローカルルール/standing order を確認します。
5. 重要ポイント:LODGE =「提出したのに、提出していない扱い」になり得る
実務で事故が多いのはここです。
- 締切を守るべき書面(opposition / reply 等)を lodge で済ませたつもり
→ “not filed” なので、期限徒過・未提出と扱われるリスクが出ます。 - 逆に、file すべきでないもの(機密資料・証拠物等)を file してしまう
→ 公開・閲覧や秘匿の問題(redaction / sealing)が絡み、後処理が重くなりがちです。
6. 実務チェックリスト(迷った時の判断軸)
- その書面は「期限に間に合わせる必要がある」タイプか?
→ 原則 file(eFile 含む)。 - 規則・ローカルルール・裁判官指示に “lodge” と明記されているか?
→ lodge 指示がある場面は lodge(例:sealed record の前提で lodged など)。 - “裁判官が読むための控え(courtesy copy)”なのか?
→ eFile(file)+別途 lodge/提出、という二段構えがあり得ます(裁判所・部運用次第)。
まとめ
- FILE:正式受理。事件記録に入り、期限・効力・公開性に直結。
- LODGE:一時預け(not filed)。裁判官の検討用、証拠・記録物、sealed 手続の前提などで登場。
カリフォルニア実務では、「提出=全部 file」ではありません。“何を、誰に、どのステータスで入れるか”(file か lodge か)が結果に影響します。特に eFiling が当たり前になった今でも、**lodge(部への提出、記録物の預け)**が消えたわけではないので、ローカルルールと部の指示は都度確認するのが安全です。
免責(Disclaimer)
本記事は、カリフォルニア州の訴訟実務における file および lodge の一般的な概念を説明する目的で作成したものであり、特定の事件に対する法的助言(リーガルアドバイス)ではありません。具体的な手続・提出方法は、裁判所(郡・部)ごとのローカルルール、裁判官のスタンディングオーダー、電子提出(eFiling)ベンダーの運用、事件の種類・状況により異なります。個別事案については、最新の規則・命令を確認のうえ、必要に応じて弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和