田中良和国際法律事務所

マレリのChapter 11申請:財務再建の背景と今後の手続の見通し

マレリ(Marelli Holdings Co., Ltd.)は、日本に本社を置く自動車部品メーカーであり、世界的に事業を展開するサプライヤーとして知られています。過去にはカルソニックカンセイとして日産自動車と密接な関係を持っていましたが、2019年にイタリアのマニエッティ・マレリ(Magneti Marelli)と統合され、グローバルブランドとして再編されました。

マレリは2025年初頭、アメリカの連邦倒産法第11章(Chapter 11)の適用をデラウェア州連邦破産裁判所に申請しました。この申請は、アメリカ国内のグループ企業(たとえばMarelli North America, Inc.など)を対象としたものです。

申請の背景には以下のような要因が挙げられます:

  • グローバル自動車市場の低迷:コロナ禍や半導体不足の影響による需要減退。
  • 原材料費と物流コストの上昇:継続的なインフレ圧力による供給網の不安定化。
  • 高水準の負債:PEファンドによる買収後のレバレッジドファイナンスに起因する債務超過。

結果として、債務の履行が困難となり、Chapter 11手続により事業再編と債務削減を図る決断に至ったと考えられます。

Chapter 11は「再建型」の倒産手続であり、破産申請会社が運営を継続しながら債権者との再建計画(reorganization plan)を策定・承認してもらう制度です。

マレリのChapter 11手続の流れは概ね以下のとおりです:

  1. First Day Motions(初期的申立):事業継続に不可欠な支払(給与、物流費、重要取引先への支払等)について裁判所の許可を得る。
  2. 債権者リストと通知:債権者に対して破産申請の通知がなされ、債権届出の期限が設定される。
  3. 重要取引先の選定(Critical Vendor):事業継続に不可欠と判断されたベンダーに対しては、例外的に申立前債権の一部支払が認められる場合がある。
  4. 再建計画の提出・承認:マレリは裁判所および主要債権者の支持を得て、債務削減および資本構成の見直しを含む再建計画を策定・提出。
  5. 裁判所による承認(Confirmation):一定の要件を満たす場合、裁判所が再建計画を認可し、手続は終結に向かう。

マレリと取引のある日本企業にとっては、Prepetition債権(破産申立前の債権)の扱いが大きな関心事となります。とくに、**重要取引先(Critical Vendor)**として認定されれば、支払を受けられる可能性がある一方、認定されなければ債務の大半が削減または分割払いになる可能性があります。

そのため、Chapter 11手続における地位の確保、債権届出、交渉の進め方について、アメリカ倒産法に詳しい弁護士による支援が不可欠です。

マレリのChapter 11申請は、グローバル自動車産業の変化に翻弄される中での苦渋の決断といえます。手続の行方は、関連する日系企業にも大きな影響を与える可能性があるため、今後の展開を注視する必要があります。

必要に応じて、アメリカの破産手続に精通した弁護士と連携し、債権保全や将来の取引継続に向けた戦略を早期に検討することをお勧めします。マレリのChapter11に関する質問については、弊事務所にお問い合わせください。

【免責事項】

本記事は情報提供のみを目的としており、特定の法律的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、サンフランシスコ)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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