🏙 はじめに
ロサンゼルス市(以下、LA)は、その多様な都市景観と自然環境が魅力的な一方で、景観保全・安全対策において複雑な規制が入り組んでいます。本記事では、主に以下の4つの切り口から解説します:
- 景観デザイン条例
- 水・植栽関連規制
- 防火ゾーン(Zone 0)と防火景観
- 手続・許認可上のポイント
1. 景観デザイン条例(Landscape & Site Design Ordinance)
LA市計画部は、「Landscape and Site Design Ordinance」により、外観景観の整備を義務付けています。この規則では、建築物や駐車場、歩道などにおける緑化とデザインの基準を定め、公共の景観品質を保全しようとするものです。
規制対象には、樹木・低木の配置、舗装材料、照明器具、雨水排水などが含まれ、特定の面積以上の敷地には許可申請および計画の提示が必要です。事前相談窓口も設置されており、プロジェクト設計段階からの法的対応が望まれます。
2. 水利用&植栽規制──節水型景観の推進
カリフォルニア州全体では、干ばつ対策として2023年10月に「AB 1572」が成立。「非機能的芝生」(駐車場周辺など人が使わない緑地)への飲用水散水を禁止する内容で、商業・公共用地が主な対象です。
市内でもこれに準じ、節水型景観(ドライスケーピング、ネイティブプランツ導入など)への移行が進んでおり、関連する補助金制度への対応も必要になります。
3. 防火ゾーン(Zone 0)──火災対策としての景観変革
最近の山火事被害を受け、カリフォルニア州林火局(Board of Forestry and Fire Protection)は、住宅周囲5フィートを「Zone 0」として燃えやすいマルチ、木製フェンス、易燃性植物などの撤去・禁止を求める規則を検討中です。
適用対象は新築で即時適用、既存住宅に対しては3年間の猶予付き予定。さらに、Defensible Space(防衛空間)の整備もLA市条例で必須化されており、住民・景観設計者はこれを景観デザインにどう組み込むかが問われています。
4. 手続・許認可・ゾーニングとの関係
- 市内75%は一戸建てゾーンに指定され、高さ制限や建ぺい率制限が厳格。
- CEQA(カリフォルニア環境品質法)によって、大規模なプロジェクトでは環境影響評価(EIR)が必要。
- 景観設計を業として行うには、C‑27ライセンス(造園工事業者許可)が必要。
✅ 弁護士としてのアドバイスまとめ
チェック項目 | 対策ポイント |
---|---|
許可要件 | 景観条例・ゾーニング・CEQAの確認 |
防火基準 | Zone 0、防衛空間の適合 |
節水規制 | AB 1572、節水型景観対応 |
許認可手続 | 許可種類、先行アセスメント、C‑27 |
設計・施工 | プロの協業+行政との事前協議 |
ロサンゼルスでは、美観・環境・安全(特に水・火災対策)の三軸が複雑に交差する景観規制が広がっています。法的な観点からいえば、早めの制度把握と行政折衝、適切な専門家の導入が、トラブル回避とプロジェクト円滑化の鍵となります。
ご相談・ご依頼はいつでもどうぞ。LA在住法律家として、景観×都市開発×環境安全の視点からサポートいたします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。具体的な案件については、必ず弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和