田中良和国際法律事務所

取引先の米国法人がChapter 11を申請した場合の対応

米国でビジネスを展開する日本企業にとって、現地の取引先が突然Chapter 11(チャプターイレブン)=連邦破産法第11章を申請したという知らせは、大きな衝撃となることがあります。Chapter 11申請が意味すること、債権者として取り得る行動、そしてリスク管理の観点から説明します。


Chapter 11は、米国連邦破産法に基づく事業再建型の破産手続です。債務者(企業)は裁判所の監督下で事業を継続しながら、再建計画(reorganization plan)を策定・提出し、債務の返済スケジュールや条件を変更することが可能になります。

主なポイント:

  • 会社は即時に清算されるわけではなく、原則として業務を継続します。
  • 債権者への支払いは自動的に一時停止(automatic stay)されます。
  • 債権者は再建計画に基づき、債務返済を受ける可能性がありますが、満額回収できるとは限りません。

1. 自動停止命令(Automatic Stay)の理解

Chapter 11申請と同時に、すべての債権回収行為が一時停止されます。これは債権者が訴訟や差押え、支払い督促を行うことを禁じる法的命令です。

➡ 請求書の送付は可能ですが、支払いを強制する行為は避けましょう。

2. 債権者リストへの記載確認

裁判所に提出される「債権者リスト」に自社が正しく記載されているか確認します。不記載だと通知を受け取れず、債権届出が間に合わない可能性があります。

➡ 記載漏れがあれば、速やかに破産管財人または裁判所に連絡を取りましょう。

3. 債権の届出(Proof of Claim)

債権回収を希望する場合は、定められた期限までにProof of Claim(債権届出書)を提出する必要があります。これを怠ると、再建計画上の支払いを受けられない可能性があります。

➡ 専門家による確認を受けて、正確な記載と証拠添付を行いましょう。


1. Post-Petition債権と優先弁済の可能性

Chapter 11申請後に発生した債務(Post-Petition債務)は、優先的に弁済される傾向があります。

➡ 契約書や注文書に「Post-Petitionの債務であること」を明示しましょう。

2. 担保・保証・前払いの活用

新たな取引に際しては、回収リスクを軽減するために担保設定、個人保証、前払い条件などの交渉を検討すべきです。

3. 取引停止の判断

継続リスクが高すぎる場合は、法的アドバイスを得た上で、契約違反とならないよう注意しながら取引の停止を検討します。


以下のような場合には、米国破産法に精通した弁護士への相談をお勧めします。

  • 債権届出の書類作成や提出方法が不明な場合
  • 破産裁判所からの通知内容が理解しにくい場合
  • 債権者委員会への参加を検討している場合
  • 継続取引に関する条件交渉をしたい場合

取引先がChapter 11を申請した際には、慌てず、法的な仕組みを理解したうえで、債権者としての立場を確保する行動を取ることが重要です。正しい手続きを踏めば、回収のチャンスを残すことも可能です。米国特有の制度に関する不明点は、専門家に早めにご相談ください。


【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を提供するものではありません。個別の状況に応じた対応については、必ず資格ある弁護士にご相談ください。


カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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