田中良和国際法律事務所

口頭の契約で家主から部屋を借りた借主は突然の退去命令に従わなければならないのか?

大家と借主が、口頭で部屋を借りる契約を交わし、借主は毎月家賃を支払っているという状況です。ところがある日、大家から「部屋の使い方が汚い」と指摘され、突然の退去を求められただけでなく、部屋を汚したとして損害賠償まで請求されました
このような場合、

  • 借主はすぐに退去しなければならないのでしょうか?
  • 部屋に住み続けることはできるのでしょうか?
  • 損害賠償の請求には応じなければならないのでしょうか?

借主には居住権があり、突然の退去命令に従う必要はありません。しかし、30日以内(または60日以内)に退去しなければなりません

カリフォルニア州法では、1年未満の賃貸契約は書面でなくても成立します(Civil Code §1945)。したがって、家賃を毎月支払っていれば、口頭の賃貸契約が成立していると法的に判断されます
このような契約は「月単位の契約(month-to-month tenancy)」と見なされ、借主には法的な居住権が与えられます。

原則として、借主は正当な手続きがない限り退去する義務はありません
大家が借主に退去を求めるには、以下のいずれかの法定通知(written notice)が必要です:

  • 30日通知:入居期間が1年未満の場合
  • 60日通知:入居期間が1年以上の場合
  • 3日通知(3-Day Notice to Cure or Quit):契約違反があった場合(例:家賃滞納、違法行為など)

「部屋が汚い」という主観的な理由だけでは、即時退去を命じる法的根拠にはなりません

大家が法的に有効な退去通知を出し、借主がそれを受け取った場合、通知期間が終了するまでに退去する法的義務が発生します
たとえば、30日通知を受け取った場合は、通知から30日以内に退去する必要があります
これに従わなかった場合、大家は裁判所に対して「不法占拠排除(Unlawful Detainer)」訴訟を起こし、強制退去命令(Eviction Judgment)を取得する可能性があります。

借主には、部屋を常識的に使用する義務(ordinary care)がある一方で、経年劣化や通常の使用による汚れ(normal wear and tear)は損害賠償の対象になりません
「部屋の使い方が汚い」という主張だけで損害賠償を請求するには、以下のような具体的な証拠が必要です:

  • 汚損の内容・程度が通常の範囲を超えていること
  • 借主による過失や故意の行為が原因であること
  • 損害の修復費用が明確に証明されていること

証拠が不十分な場合、借主は支払いを拒否する正当な理由があります。

  • 口頭契約でも有効な賃貸契約が成立しており、借主には法的に保護された居住権があります。
  • 正当な手続きを経ずに「すぐに退去しろ」と言われても、従う必要はありません。
  • 正式な退去通知を受け取った場合は、30日または60日以内に退去する義務があります。
  • 損害賠償には具体的な証拠が必要であり、不当な請求には応じなくてもかまいません。

トラブルに巻き込まれた際は、書面のやり取りを残し、状況に応じて弁護士への相談を検討してください

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別案件については、弁護士に直接ご相談ください。


カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和(Yoshikazu Tanaka)

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