■ 質問
大家と借主が、口頭で部屋を借りる契約を交わし、借主は毎月家賃を支払っているという状況です。ところがある日、大家から「部屋の使い方が汚い」と指摘され、突然の退去を求められただけでなく、部屋を汚したとして損害賠償まで請求されました。
このような場合、
- 借主はすぐに退去しなければならないのでしょうか?
- 部屋に住み続けることはできるのでしょうか?
- 損害賠償の請求には応じなければならないのでしょうか?
■ 回答
借主には居住権があり、突然の退去命令に従う必要はありません。しかし、30日以内(または60日以内)に退去しなければなりません
1. 口頭契約でも賃貸契約は有効
カリフォルニア州法では、1年未満の賃貸契約は書面でなくても成立します(Civil Code §1945)。したがって、家賃を毎月支払っていれば、口頭の賃貸契約が成立していると法的に判断されます。
このような契約は「月単位の契約(month-to-month tenancy)」と見なされ、借主には法的な居住権が与えられます。
2. 借主は部屋に住み続けられるのか?
原則として、借主は正当な手続きがない限り退去する義務はありません。
大家が借主に退去を求めるには、以下のいずれかの法定通知(written notice)が必要です:
- 30日通知:入居期間が1年未満の場合
- 60日通知:入居期間が1年以上の場合
- 3日通知(3-Day Notice to Cure or Quit):契約違反があった場合(例:家賃滞納、違法行為など)
「部屋が汚い」という主観的な理由だけでは、即時退去を命じる法的根拠にはなりません。
3. 正式な退去通知を受け取った場合はどうなる?
大家が法的に有効な退去通知を出し、借主がそれを受け取った場合、通知期間が終了するまでに退去する法的義務が発生します。
たとえば、30日通知を受け取った場合は、通知から30日以内に退去する必要があります。
これに従わなかった場合、大家は裁判所に対して「不法占拠排除(Unlawful Detainer)」訴訟を起こし、強制退去命令(Eviction Judgment)を取得する可能性があります。
4. 損害賠償請求には証拠が必要
借主には、部屋を常識的に使用する義務(ordinary care)がある一方で、経年劣化や通常の使用による汚れ(normal wear and tear)は損害賠償の対象になりません。
「部屋の使い方が汚い」という主張だけで損害賠償を請求するには、以下のような具体的な証拠が必要です:
- 汚損の内容・程度が通常の範囲を超えていること
- 借主による過失や故意の行為が原因であること
- 損害の修復費用が明確に証明されていること
証拠が不十分な場合、借主は支払いを拒否する正当な理由があります。
■ まとめ
- 口頭契約でも有効な賃貸契約が成立しており、借主には法的に保護された居住権があります。
- 正当な手続きを経ずに「すぐに退去しろ」と言われても、従う必要はありません。
- 正式な退去通知を受け取った場合は、30日または60日以内に退去する義務があります。
- 損害賠償には具体的な証拠が必要であり、不当な請求には応じなくてもかまいません。
トラブルに巻き込まれた際は、書面のやり取りを残し、状況に応じて弁護士への相談を検討してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別案件については、弁護士に直接ご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和(Yoshikazu Tanaka)