国際化が進む中、日本で結婚した日本人夫婦がカリフォルニア州に移住し、その後現地で離婚を検討するケースが増えています。「日本で結婚した日本人同士」がカリフォルニア州で離婚できるのか、そして手続きの流れや注意点について、カリフォルニア弁護士の視点から解説します。
カリフォルニア州で離婚するための基本要件
カリフォルニア州で離婚を申請するためには、当事者の一方が以下の居住要件を満たす必要があります:
- カリフォルニア州に少なくとも過去6か月以上居住していること
- 離婚を申請する郡(カウンティ)に過去3か月以上居住していること
この居住要件を満たしていれば、婚姻場所が日本であっても、当事者が日本国籍であっても、カリフォルニア州の裁判所に対して離婚手続きを行うことが可能です。
また、相手方がカリフォルニア州以外(たとえば日本)に居住している場合でも、この要件を満たす一方の当事者が申立人となって離婚手続きを進めることができます。
ただし、相手方が日本に居住している場合には、離婚申立書などの裁判所書類を日本国内で正式に送達する必要があり、この送達はハーグ送達条約に従って行わなければなりません。送達には数か月かかることもあるため、早めの対応が重要です。
日本の結婚はアメリカで有効か?
日本で法的に有効に成立した婚姻は、アメリカでも原則として有効と認められます。したがって、日本で婚姻届を提出している日本人夫婦は、カリフォルニア州でも「合法的な婚姻関係」にあるとみなされ、離婚手続きの対象となります。
離婚手続きの一般的な流れ
- 申立書の提出: 住居要件を満たした上で、Petition for Dissolution of Marriage を家庭裁判所に提出します。
- 相手方への送達: サービス・オブ・プロセス(Service of Process)を通じて、配偶者に書類を正式に送達します。
- 応答と協議: 配偶者が同意すれば協議離婚に近い形で進み、争いがある場合は調停・裁判に発展します。
- 離婚判決(Final Judgment): 裁判所によって離婚が正式に認められ、法的効力が発生します。
なお、最低6か月間の待機期間(cooling-off period) が必要とされており、それ以前に離婚を成立させることはできません。
日本の戸籍への反映も必要
カリフォルニア州で離婚判決を得た後、それを日本の戸籍に反映させるには、離婚届書 と 離婚判決の認証付きコピーおよび翻訳 を日本の本籍地役所または在ロサンゼルス日本国総領事館などに提出する必要があります。
これを怠ると、日本の戸籍上は婚姻が継続している扱いになり、将来の再婚手続きや財産分与・相続等に支障をきたす可能性があります。
よくあるご質問
- Q. 日本で協議離婚をしたが、米国では有効か?
A. 原則として、日本の協議離婚(家庭裁判所を通さない離婚)は、カリフォルニア州では離婚判決とはみなされません。再度、カリフォルニアで正式な離婚手続きが必要です。 - Q. 相手が日本に住んでいても、カリフォルニアで離婚できる?
A. 申立人がカリフォルニア州の居住要件を満たしていれば、相手方が国外にいても離婚手続きは可能です。ただし、送達(Service of Process)にはハーグ送達条約等に基づいた国際的手続きが必要になります。
まとめ
日本で結婚した日本人同士でも、カリフォルニア州に居住している限り、現地の裁判所で離婚手続きを行うことが可能です。戸籍の扱いや国際送達の問題など、通常の離婚とは異なる手続きもあるため、国際離婚に精通した弁護士の助言を受けることをおすすめします。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事情については、必ず弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和