田中良和国際法律事務所

離婚時の子の親権 ― カリフォルニア裁判所の決定基準と判例

カリフォルニア州で夫婦が離婚する際、子の親権(Custody)は**家族法典(California Family Code)に基づき、裁判所が「子の最善の利益(Best Interests of the Child)」**を最優先に判断します(Family Code §3011, §3020)。この記事では、親権の種類、裁判所が考慮する基準、関連条文、さらに実際の判例を交えて解説します。


  • 法的親権(Legal Custody)
    子の教育、医療、宗教などの重要事項を決定する権利と義務(Family Code §3003)。単独(Sole)または共同(Joint)があり、共同の場合は両親が協議して決定します。
  • 物理的親権(Physical Custody)
    子がどちらの親と日常生活を共にするか(Family Code §3004)。こちらも単独または共同があり、共同でも生活時間の配分は必ずしも半々ではありません。

Family Code §3011により、裁判所は以下の要素を総合的に判断します。

  1. 子の健康・安全・福祉(§3011(a))
    → 家庭内暴力や虐待歴の有無(Family Code §3011(b))。
  2. 親の育児能力と精神的安定
    → 精神状態、生活環境、安定性など。
  3. 子と各親との関係の質(§3011(c))
    → 養育への関与度や愛着関係。
  4. 親間の協力姿勢
    → 相手方の親子関係を妨害しないか(Family Code §3040(a)(1))。
  5. 子の意見(14歳以上の場合)(Family Code §3042)
    → 十分な年齢と成熟度がある場合、意見を考慮。
  6. 安定した生活環境の維持
    → 学校、地域、友人関係など、生活基盤の継続性。

Family Code §3044では、過去5年以内に家庭内暴力の裁判所命令があった場合、加害者に単独親権を与えることは原則制限されます。ただし、加害者がリハビリプログラム修了など特定条件を満たす場合は例外あり。


  • In re Marriage of Burgess (1996) 13 Cal.4th 25
    カリフォルニア州最高裁は、親権の判断において「子の最善の利益」が最も重要であり、親の引越し(relocation)もその利益に基づき判断すべきとしました。
  • In re Marriage of LaMusga (2004) 32 Cal.4th 1072
    親が子を遠方に移転させる場合、裁判所は移転が子ともう一方の親との関係に及ぼす影響を慎重に考慮すべきと判示しました。
  • Montenegro v. Diaz (2001) 26 Cal.4th 249
    親権の変更には「重大な事情の変化(significant change of circumstances)」が必要であるとし、安定性の重要性を強調しました。

離婚調停や裁判では、まず**調停(Mediation)**が行われます(Family Code §3170)。多くのカウンティでは家庭裁判所の調停員が両親の合意形成を試み、それでも合意できない場合、裁判官が判断します。


まとめ

カリフォルニア州の親権判断は、親の権利よりも子の利益を優先します。判例や条文が示すとおり、安定した生活環境の維持と、両親の協力的姿勢が大きな鍵となります。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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