2025年1月1日より、カリフォルニア州の大部分の裁判所において電子提出(e-Filing)が義務化され、訴訟当事者や代理人である弁護士にとって、書面提出の実務が大きく変化しています。本記事では、e-Filing義務の対象範囲、例外、そして実務上の注意点について、弁護士の視点から詳しく解説します。
e-Filing義務の概要:2025年からの変更点
これまでカリフォルニア州では裁判所ごとにe-Filingの導入状況が異なっていましたが、California Rules of Court, Rule 2.253の改正により、2025年以降、多くの裁判所で電子提出が原則義務化されています。
主なポイント:
- 民事、家族、遺産、破産、控訴事件において、弁護士が代理する当事者にはe-Filingが原則義務
- 裁判所がe-Filing対応裁判所一覧に掲載されている必要があります
- 自力訴訟当事者(pro per)は義務対象外(ただし利用可能)
▶ California Rules of Court, Rule 2.253(電子提出義務)
例外と免除申請
Rule 2.253(b)(2)により、以下のような状況ではe-Filingの免除が認められる場合があります:
- 技術的障害またはネット環境の制約がある場合
- 身体的・認知的障害により電子提出が困難な場合
- 裁判所が紙提出を明示的に求めた場合(例:証拠品の原本など)
免除申請には、Judicial Council Form EFS-005の提出が必要です。
▶ EFS-005(Request for Exemption from eFiling)PDF
実務上の注意点
e-Filingの実務では、以下の点に特に注意が必要です:
- 提出期限の遵守:午後11時59分までにe-Filingされた書面は、その日付で受理されます。ただし、緊急対応が必要な場合は裁判所の締切時間に注意。
- PDF形式とOCR対応:提出書面はPDF形式で、可能な限りOCR(文字検索可能)であることが推奨されています。
- 署名方式:Rule 2.257により、弁護士の電子署名は“/s/ 弁護士名”の形式で許容されています。
- Proof of Service(送達証明)もe-Filingに含まれる点を忘れずに。電子サービス(e-Service)の設定も同時に確認しましょう。
▶ California Rule of Court 2.257(電子署名)
主要なe-Filingサービスプロバイダー(EFSP)
提出には、裁判所ごとに指定されたEFSP(Electronic Filing Service Provider)を通じて行います。以下に代表的なプロバイダーのリンクを示します:
まとめ:今後の対応と展望
2025年以降、e-Filingは単なる技術的なツールではなく、弁護士業務の必須要素となります。電子提出に慣れることで、事務効率化や期限遵守の精度が高まる一方、形式的ミスによるリジェクトも増える傾向があります。
定期的に裁判所のローカルルールを確認し、提出書面のフォーマット・署名・PDF仕様などに細心の注意を払うことが求められます。
今後はリモート審理やAIによるドキュメントレビューとの連携など、法曹実務のデジタル化が一層進展していくと予想されます。
当ブログは情報提供を目的としたものであり、法的アドバイスを構成するものではありません。具体的な案件については弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和