田中良和国際法律事務所

テレビでよく見かける「国際弁護士」って何?「国際弁護士」は「弁護士」ではないって本当なの?

グローバル

日本のテレビでは、「国際弁護士」という肩書で、コメンテーターとして出演している方を見かけます。

皆さん「国際弁護士」って何だろう、何をしている人だろう、と疑問に思ったことがありませんか?

そもそも「国際弁護士」という名称はマスコミが勝手に作った用語で、正式には「国際弁護士」という名称の職業は存在しません。そのため、「国際弁護士」という言葉は適当な使われ方をされていて、またテレビの視聴者も何となくのイメージで理解しています。

「国際弁護士」というと、「国際的に活躍している日本の弁護士」というイメージがありますが、これは間違った理解です。テレビに出演している「国際弁護士」と名乗っている人の多くは、日本で認められた「弁護士」ではないのです。

弁護士法74条で「弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。」と定められています。また、弁護士法77条の2で、弁護士でない者が弁護士と名乗った場合、100万円以下の罰金の刑罰が科されます。「罰金」は刑法上の処罰ですので、刑罰の一種となります。(例えば、駐車違反のときに支払うお金は刑罰ではないので、「反則金」といって、「罰金」とはいいません。)

ここでいう「弁護士」は日本の司法試験に合格して、日本弁護士連合会に正式に登録している弁護士をいいます。(私も日本の司法試験に合格して、日本弁護士連合会に登録しています)

テレビで見かける「国際弁護士」のコメンテーターの多くは、日本の司法試験に合格していませんし、日本弁護士連合会に登録もしていません。ですから「弁護士」と名乗ると弁護士法違反になります。そこで、「弁護士」の前に「国際」という単語を足して、弁護士法74条に違反しないようにしているのです。

もっとも、「国際弁護士」というのですから、海外の司法試験には合格していると思います。(登録費用がかかるので、海外で弁護士登録までしているかは分かりませんが)

日本以外の国、例えばアメリカのニューヨーク州の司法試験に合格して、ニューヨーク州で弁護士登録していると、日本で「ニューヨーク州弁護士」と名乗ることはできます(弁護士法違反にはなりません)。日本の司法試験は、外国の司法試験に比べてかなり難しいので、英語がそこそこできれば、日本の司法試験には合格できないが、例えばニューヨーク州の司法試験には合格できるということもよくあります。仮にコメンテーターがニューヨーク州の弁護士であれば、コメンテーターの肩書に「ニューヨーク州弁護士」と書けば正確なのですが、それよりも「国際弁護士」と書いた方が、視聴者に「日本の弁護士資格を持っていて、海外でも活躍している弁護士」のような誤った理解をしてもらえる可能性があり、権威がありそうなので、マスコミは「国際弁護士」という用語を好んで使っていると思われます。

特に、米国は州ごとに弁護士資格が分かれているので、ニューヨーク州の司法試験に受かっても、他の州(例えばカリフォルニア州)で弁護士として活動することはできません。その場合、もう一度、カリフォルニア州で司法試験を受け直す必要があります。

コメンテーターに「ニューヨーク州弁護士」と正確な肩書を表示してしまうと、例えばカリフォルニアで起こった事件についてそのニューヨーク州弁護士のコメンテーターがコメントした場合、視聴者から「ニューヨーク州の資格しか持っていない弁護士がどうしてカリフォルニア州の事件についてコメントしているの?」という疑問が出てきます。そのため、「国際」というあいまいな単語を付けて、あたかも国際的な案件の全てに詳しい日本の弁護士のような、誤った印象を与えているのです。

なお、日本の弁護士がニューヨーク州やカリフォルニア州の司法試験に合格して、その州で弁護士登録している場合、名刺には「国際弁護士」とは書きません。必ず「ニューヨーク州弁護士」「カリフォルニア州弁護士」と正確に記載します。

日本の弁護士でも、ニューヨーク州の司法試験を受けて合格する方がいますが、実際にニューヨーク州の法律事務所で務めた経験がある方はかなり少なく、ニューヨーク州の法廷に立った経験がある日本の弁護士は極めて少ないと思います。(この点は次のブログで詳しく書きます)

私は実際のところは知りませんが、「国際弁護士」と肩書に書いているコメンテーターも、実際に海外で弁護士として活動したことがある方は多くないように思います。

「国際弁護士」は「弁護士」ではない(ことが多い)ですし、「国際」と付いていますが、例えばニューヨーク州の司法試験には合格していたとしても、他の州の法律や他の国の法律は知らないことが多いです。

「国際弁護士」という言葉の響きと、実際にその方が持っている資格や知識、経験には隔たりがあります。

ちなみに、司法書士事務所で「法務事務所」という名称を使っているところがありますが、これも弁護士法で弁護士以外は「法律事務所」という名称を使ってはいけない、というルールがあるので、仕方なく法律事務所に似た、「法務事務所」という名称を使っています。ただ、一般の方には、「法律事務所」と「法務事務所」の区別がつかず、まぎらわしいので、「法務事務所」というまぎらわしい言い方をせずに、「司法書士事務所」という名称にした方が誠実と思います。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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