田中良和国際法律事務所

B ビザ:アメリカでのビジネス活動に必要な渡航ビザ

ビジネス目的でアメリカへの渡航を計画している方にとって、適切なビザを選択することは成功への第一歩です。B-1ビザはビジネス訪問者向けのビザタイプとして、多くの日本のビジネスパーソンに利用されています。B-1ビザの概要、メリット、そしてESTAとの違いについて詳しく解説します。

B-1ビザとは

B-1ビザは、商談、会議出席、契約交渉、市場調査など、アメリカでの一時的なビジネス活動を目的とする外国人向けの非移民ビザです。このビザの主な特徴は:

  • 有効期間:通常10年間(国籍により異なる場合あり)
  • 滞在可能期間:1回の入国につき最大6ヶ月(延長可能)
  • 複数回入国可能

B-1ビザの重要な制限:アメリカ国内での報酬禁止

B-1ビザの最も重要な制限事項は、アメリカ国内での報酬を受け取ることができないという点です。具体的には:

  • アメリカの企業や個人から給与やコンサルタント料などの報酬を受け取ることはできません
  • ビジネス訪問中の費用は、渡航者自身または外国の雇用主が負担する必要があります
  • 実質的な労働とみなされる活動は禁止されています

この制限はB-1ビザの本質的な部分であり、違反した場合はビザの取り消しや将来のビザ申請への悪影響だけでなく、法的制裁の対象となる可能性があります。

ESTAとB-1ビザの違い

ビザ免除プログラム(VWP)対象国の日本国民は、ESTA(電子渡航認証システム)を利用して最大90日間の短期滞在が可能です。しかし、ビジネス目的で頻繁に渡米する場合、B-1ビザの取得を検討すべき理由があります:

  • 滞在期間の違い:ESTAは90日間のみですが、B-1ビザは最大6ヶ月の滞在が可能
  • 入国審査の厳しさ:ESTAで頻繁に渡航すると入国審査が厳しくなる傾向があります
  • ビジネス活動の範囲:B-1ビザでは、より広範なビジネス活動が許可されます

ただし、ESTAとB-1ビザはともに、アメリカ国内での報酬受け取りが禁止されている点は共通しています。

B-1ビザがESTAより望ましいケース

アメリカでビジネスを展開するために調査や準備を行う際、以下の理由からESTAよりもB-1ビザの取得が望ましい場合があります:

  • 頻繁な渡航が必要な場合:ESTAで短期間に何度も渡航すると、「実質的にアメリカで働いている」と疑われるリスクがある
  • 長期のビジネス調査:市場調査や事業展開の準備に90日以上かかる場合
  • 入国拒否リスクの軽減:明確なビジネス目的を示すB-1ビザがあれば、入国審査がスムーズになる

Eビザ取得前のB-1ビザ活用

多くの起業家や企業は、最終的にはE-1(貿易)やE-2(投資)ビザの取得を目指しますが、その準備段階としてB-1ビザが重要な役割を果たします:

  • 市場調査:アメリカ市場の可能性を探るための現地調査
  • ビジネスパートナーとの会議:将来のビジネス展開に向けた関係構築
  • 事業計画の策定:現地の状況を踏まえた実現可能な事業計画の作成
  • 物件探し:オフィスや店舗などの事業用物件の調査

これらの活動はすべて、アメリカ国内で報酬を受け取らない前提で行われる必要があります。

B-1ビザ申請の重要ポイント

B-1ビザを申請する際に審査官が重視するのは、以下の点です:

  • 渡航目的の明確さ:具体的なビジネス計画や会議のスケジュールなど
  • 母国とのつながり:日本に戻る意思を示す証拠(家族、財産、雇用関係など)
  • 財政能力:滞在中の生活費をまかなえる資金証明
  • 滞在期間の妥当性:予定しているビジネス活動に見合った滞在期間
  • 報酬に関する明確な説明:アメリカ国内で報酬を受け取らないことを示す証拠や説明

まとめ

B-1ビザは、アメリカでのビジネス展開を検討している日本企業や起業家にとって、非常に有用なツールです。ESTAでの短期渡航を繰り返すよりも、B-1ビザを取得することで、より安定した環境でビジネス調査や準備を進めることができます。ただし、アメリカ国内で報酬を受け取ることはできないという重要な制限があることを常に念頭に置く必要があります。将来的にE-1やE-2ビザでの本格的な事業展開を目指す方にとっても、その準備段階としてB-1ビザの活用をお勧めします。

ビザ申請は個々の状況によって大きく異なるため、具体的なケースについては、経験豊富な弁護士へのご相談をお勧めします。


この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスを構成するものではありません。具体的なビザ申請については、資格を持つ移民弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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