少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、「移転価格税制」という税のルールがあります。英語では Transfer Pricing Rules といいます。
例えば、日本企業のグループ内取引であれば、税率の高い国の売上を意図的に減らし、税率の低い国の売上を増やすことで、グループ全体の税負担を下げようと考えることもあるでしょう。しかし、そのような価格操作は規制されており、それが移転価格税制です。
カリフォルニア州と移転価格税制
カリフォルニア州で事業を行う企業にとって、特に国際取引を行っている場合、移転価格税制への対応は避けて通れないテーマです。
移転価格税制とは、関連会社間(親子会社間など)で行われる商品・サービス・ライセンスなどの取引に対し、適正な価格設定を求める規制です。企業グループ内の取引価格を意図的に操作することで税負担を不当に軽減する行為を防ぐことが、その主な目的です。
カリフォルニア州は連邦の移転価格規制に従いつつ、州独自のルールも適用されます。州税務局(California Franchise Tax Board、FTB)は関連会社間取引を厳しく監視しており、問題が発覚した場合には追徴課税や罰金のリスクがあります。
アームスレングス基準とは
移転価格税制の中心にある考え方が「アームスレングス(Arm’s Length)基準」です。これは、関連会社間の取引価格を、独立した第三者間で行われる取引と同等の条件・価格に設定すべきとする原則です。
具体的には、以下のような方法で適正価格を算定します。
①独立価格比準法(CUP法):同様の取引が独立企業間でどの価格で行われているかを市場データで調べ、それを基準にする方法です。
②利益分割法:市場価格の直接比較が難しい場合に、グループ全体の利益を機能・リスクに応じて関連会社間で配分する方法です。
③コストプラス法:製品・サービスの原価に合理的な利益率を加算して価格を設定する方法です。
アームスレングス基準を守ることで、税務当局からの不正認定リスクを避け、取引の透明性を確保することができます。カリフォルニア州のFTBも、この基準への準拠を厳格に求めています。
昨今の国際的な動向:グローバル・ミニマム課税との関係
近年、移転価格税制を取り巻く環境は大きく変わっています。OECDが主導するBEPS 2.0(Pillar 2)のもと、連結売上が一定規模(約1,100億円超)以上の多国籍企業を対象に、各国の実効税率が15%を下回る場合は差額分を追加課税する「グローバル・ミニマム課税」の枠組みが整備されつつあります。日本ではすでに2024年4月から所得合算ルール(IIR)の適用が開始されており、2025年度税制改正では軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)も法制化されています。
このような流れの中で、移転価格の設定はグループ全体の実効税率に直接影響するため、その重要性はますます高まっています。
まとめ
移転価格税制は、グループ内取引を通じた課税逃れを防ぐための重要な規制です。カリフォルニア州で事業を行う企業は、アームスレングス基準に沿った適切な価格設定と文書化を行うことで、税務リスクを低減できます。また、グローバル・ミニマム課税の導入により、移転価格戦略はグループ全体の税務計画とより密接に連携して考える必要があります。
個別の事案については、弁護士または税理士にご相談いただくことをお勧めします。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的・税務的なアドバイスを提供するものではありません。具体的な事例については、弁護士または税理士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和
