国際結婚や離婚に関わる日本人にとって、親権制度の違いは子どもの生活や将来に大きな影響を与えます。カリフォルニア州と日本の親権制度の違いを法的観点から比較し、実務上の注意点や最近の制度改正も含めて解説します。
1. カリフォルニア州における親権制度の概要
カリフォルニア州では、親権(custody)は2つの側面に分かれています:
- Legal Custody(法的親権):教育、医療、宗教など、子どもの生活に関する重要な意思決定権。
- Physical Custody(身体的親権):子どもとどこで、どのように生活するかの実際的な監護権。
両親が離婚・別居した場合、裁判所は共同親権(Joint Custody)または単独親権(Sole Custody)を決定します。「子の最善の利益(Best Interests of the Child)」が最も重視され、複数の要素を総合的に判断して決定されます。原則は共同親権です。
2. 日本の親権制度との違い
日本では、親権は以下の2つから構成されます:
- 身上監護権:子どもを育てるための日常的な監護・教育など。
- 財産管理権:子どもの財産を管理・処分する権限。
離婚後は「単独親権」が原則で、父母のいずれか一方が親権を持つ制度です。話し合いで親権者を決めるか、話し合いで決まらなければ家庭裁判所を通じて親権者を定めます。
3. 国際結婚や別居で問題になるケース
国際結婚において一方がアメリカ、他方が日本に住む場合、次のような問題が生じることがあります:
- 国によって親権制度が異なるため、判断基準が統一されない。
- 子どもの国外移動にハーグ条約が関係する場合、法的手続が複雑化する。
4. 面会交流
カリフォルニア州では、非監護親にも面会交流の権利が広く保障され、裁判所命令により定期的な交流が実施されます。
日本では、面会交流の頻度が制限される場合が多く、月1回以下に留まるケースもあります。さらに、命令の強制力が弱いため、実施が困難になることもあります。
5. 親権変更の可能性と手続
カリフォルニア州では、状況の変化に応じて親権の見直しが可能であり、共同親権から単独親権への移行、あるいはその逆もあり得ます。
一方、日本では確定した親権の変更は非常に困難で、重大な事情(虐待など)がある場合に限られます。
6. 日本の共同親権制度導入と今後の影響
2024年、日本では離婚後も共同親権を選べる制度の導入が決定されました(2026年5月24日までに施行予定)。これにより、カリフォルニア州との制度的な共通点が生まれ、国際的な親権トラブルの一部緩和が期待されます。ただし、具体的な制度運用には引き続き注意が必要です。
7. アドバイス
カリフォルニア州と日本の親権制度には根本的な違いがあるため、以下の点に注意してください:
- 子どもの国外移動や連れ去りにはハーグ条約が関係する可能性がある。
- 新しい日本の制度への対応を検討し、実行可能な合意内容を整備する。
国際的な親権問題に直面した場合は、日米両国の法制度に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
本記事は、法的なアドバイスを目的とするものではございません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和