突然の解雇通知は、誰にとっても予想していないものです。しかし、カリフォルニア州には解雇に関する法律があり、それに従っていない解雇は違法です。カリフォルニア州の雇用法に基づく解雇の基本知識、違法解雇の典型例、解雇時に取るべき行動について解説します。
1. 任意雇用とは何か?——カリフォルニア州の基本原則
カリフォルニア州では「任意雇用(At-Will Employment)」が原則です。これは、雇用主または従業員のいずれもが、理由の有無にかかわらずいつでも雇用関係を終了できることを意味します(労働法典§2922)。
ただし、例外があります:
- 公共政策違反: 違法行為の拒否や法的権利の行使を理由に解雇された場合
- 黙示的契約: 「継続的雇用が保障されている」という合理的期待が形成されていた場合
- 誠実・公正な取引の義務違反: 不誠実または悪意ある対応で解雇が行われた場合
2. 違法な解雇の主なパターンと実例
差別による解雇(FEHA違反)
- 例:40歳以上の従業員が「もう若い人に任せたい」と言われて解雇された場合
報復による解雇
- ハラスメントの苦情を提出した直後に解雇された
- 未払い残業代を請求したことを理由に解雇された
法的義務の行使後の解雇
- FMLAやCFRAの休暇取得後に解雇された
- 陪審員義務を果たした直後に職を失った
3. 解雇プロセスの典型的な流れとポイント
(1) パフォーマンス管理と事前警告
- 非公式フィードバック: 「遅刻が目立つ」との口頭指導
- 書面による警告: 「締切未達成が続く」ことに関する文書
- PIP: 改善すべき項目と評価期間を定めた計画
(2) 解雇通知(Termination Notice)
通知には通常以下が含まれます:
- 解雇の発効日
- 最終給与と未消化有給の支払い
- COBRAに関する案内
(3) 解雇面談の注意点
- 重要な情報は記録
- その場での署名を避け、持ち帰って確認
4. 解雇後に知っておくべきあなたの権利
失業保険(UI)
- 自己都合でない限り申請可能
- 例:横領などの重大不正行為は対象外
健康保険の継続(COBRA/Cal-COBRA)
- 最大36ヶ月の延長が可能(自己負担)
最終給与と有給の支払い
- 解雇当日に受領が原則
- 遅延時は「待機時間ペナルティ」が適用
WARN法による通知義務
- 従業員75人以上の企業が大量解雇する場合は60日前の事前通知が必要
5. 不当解雇が疑われる場合の対応
具体例:
- 年齢差別:「若返りを図る」として50代の従業員を一斉解雇
- 報復:違反報告後に即解雇
- 契約違反:事前通知が明記されていたのに即日解雇
対応ステップ:
- 証拠の収集(通知書、メール、評価など)
- 経緯の記録(発言・日付・関係者名)
- 外部機関への苦情申立て(EEOC、DFEH等)
- 弁護士への相談
- 時効に注意(通常1〜3年以内)
6. 解雇後の前向きな対応と次の一歩
経済的備え:
- 失業保険を申請
- 生活費や保険を見直す
心のケア:
- 感情の整理
- 信頼できる人に相談
- 必要に応じて専門家のカウンセリング
7. 解雇に関する最近の傾向(2024年〜2025年)
- AI導入による再編での大量レイオフ
- リモート従業員への監視強化と解雇事例
- Severance Agreement による訴訟放棄条項の増加
まとめ
解雇は大きなストレスとなり得ますが、カリフォルニア州には従業員の権利を保護する法律があります。正しい知識を持ち、冷静に対応することで、新たな一歩を踏み出すための準備ができます。不当な扱いを受けたと感じた場合は、弁護士にご相談ください。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律上の助言を構成するものではありません。具体的な法的判断には、弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和