カリフォルニア州のSpousal Support(配偶者扶養費)とは?
婚姻期間に応じた支払期間・再婚・金額を解説
Spousal Support(スパウザルサポート、配偶者扶養費)は、カリフォルニア州で離婚を考える際に重要なテーマです。
日本にはないこの制度では、離婚後に一方の配偶者がもう一方に金銭的支援を続けることが法的に求められています。婚姻期間が10年以上ある場合や再婚時の影響、さらには支払期間や金額の決まり方について説明します。
Spousal Supportとは?|日本には存在しない制度
Spousal Supportとは、離婚後に元配偶者に対して金銭的に支援を行う制度で、特に収入や資産に差のある夫婦にとって重要な制度です。
✅ 日本との違い
日本では、原則として離婚後に元配偶者を経済的に扶養する義務はありません。
一方で、カリフォルニア州では、扶養を必要とする元配偶者に対し、一定期間または無期限で金銭的支援が命じられる可能性があるため、法的理解が不可欠です。
Spousal Supportは何年間もらえるのか?
Spousal Supportの支払期間は、婚姻期間の長さによって大きく異なります。基本的なルールは以下の通りです:
◆ 婚姻期間が10年未満の場合
カリフォルニア家族法 §4320 に基づき、裁判所は以下の要素を総合して支払期間を判断しますが、一般的には「婚姻期間の約半分」が目安です。
例:
結婚期間:6年 → 支払期間:約3年
結婚期間:8年 → 支払期間:約4年
これはあくまで目安であり、裁判所の裁量や当事者間の合意により異なります。
◆ 婚姻期間が10年以上の場合(長期婚姻)
10年以上の婚姻は “marriage of long duration”(長期の婚姻)と見なされ、カリフォルニア家族法 §4336(a) に明記されています:
“A marriage of long duration is a marriage of 10 years or more… the court retains jurisdiction indefinitely unless the parties agree otherwise.”
つまり:
- 裁判所が Spousal Supportに終了日を設けないことが一般的
- 無期限で支払義務が続く可能性がある
- 支払側は将来的な事情変更を理由に、終了や減額の申立てが可能
Spousal Supportの金額の決まり方
Spousal Supportの金額は、離婚手続中と離婚成立後で判断基準が異なります。
➤ 離婚手続中の仮の支払(暫定的支援)
郡の裁判所で使われている「DissoMaster」などのソフトウェアにより、月収、税引後の手取り収入、扶養義務のある子どもの人数などの要素をもとに自動計算されます。
➤ 離婚成立後の恒久的支払(長期・永久的支援)
離婚後の正式なSpousal Supportの金額は、家族法 §4320に基づき、以下の要素を総合して裁判所が判断します。
主な判断基準(§4320):
- 当事者の収入と資産の差
- 婚姻中の生活水準(standard of living)
- 就労能力・雇用可能性
- 健康状態・年齢
- 子育ての影響
- 自立に必要な時間
- 相手のキャリアをサポートしていた貢献
再婚・同棲するとどうなる?
▶ 受給者の再婚の場合
家族法 §4337 により、受給者が再婚した場合、Spousal Supportは 自動的に終了します。
“Except as otherwise agreed to by the parties in writing, the obligation of a party to pay spousal support terminates upon the remarriage of the supported party.”
裁判所の命令や合意に再婚後も支払継続と明記されていない限り、支払義務は直ちに終了します。
▶ 新しいパートナーとの同棲(cohabitation)の場合
結婚していなくても、受給者が異性・同性を問わず新たなパートナーと同居している場合、支払側は「扶養の必要性が減った」と主張して、支払終了または減額を求める申立てが可能です。
まとめ|カリフォルニアでのSpousal Supportは婚姻期間と生活状況がカギ
カリフォルニア州におけるSpousal Support(配偶者扶養費)は、日本にはない制度であり、婚姻期間、生活水準、収入の差、将来の就労見込みなど、さまざまな要因を総合して決まる非常に複雑な制度です。
特に婚姻期間が10年以上ある場合や、再婚・同棲といった生活状況の変化がある場合は、支払義務に大きな影響が出ます。
免責事項
本記事は、一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言を提供するものではありません。カリフォルニア州での離婚やSpousal Supportに関して具体的なご相談がある場合は、必ず弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和