1. なぜエステートプランニングが重要か
カリフォルニア州では、プロベート(遺産管理裁判)の期間が9か月〜2年、費用が遺産総額の約4–7%に達することも珍しくありません。適切なプランニングによって次のようなメリットがあります。
- 遺産分割を迅速化 – 相続人は数週間〜数か月で資産を受け取れる。
- 相続税・弁護士費用を最小化 – IRS・FTBへの申告準備を簡素化し、プロベート手数料を回避。
- 家族間トラブルを防止 – 法定相続人間の争い・訴訟リスクを低減。
2. リビングトラスト(Revocable Living Trust)
特徴 | メリット | 注意点 |
---|---|---|
生前に設立する可撤回信託 | ・プロベート完全回避 ・プライバシー保護(裁判所記録非公開) ・障害時の資産管理をシームレス化 | ・資産名義変更を怠ると無効化リスク |
2.1 設立ステップ
- 信託文書ドラフト
- 公証(Notarization) – カリフォルニア州公証人を利用。
- 資産のタイトル変更 – 不動産
Grant Deed
、銀行のChange of Ownership Form
- Pour‑Over Will – 信託漏れ資産を自動移管。
- 保管と共有 – Successor Trustee と CPA に PDF+ハードコピー
2.2 実務 Tips
- Successor Trustee を2名以上指名し、プライマリが辞退時のバックアップを確保。
3. 遺言書(Last Will and Testament)
3.1 基本役割
- 信託外資産(車両・個人財産)を指定受益者に分配。
Guardianship Clause
で未成年子の後見人を明示。- 遺体・遺骨の処置、ペットのケア基金など、パーソナルな希望を法的拘束力付きで残す。
3.2 カリフォルニアの法定要件
要件 | 内容 |
---|---|
年齢 | 18歳以上 |
能力 | 遺言能力(Testamentary Capacity)保持 |
形式 | 署名+2名以上の同時立会い証人 |
自筆遺言(Holographic Will)は有効で、全文を本人が自筆し署名を記載していれば成立します。証人は必要ありませんが、誤字や脱字があると無効リスクが高まるため、正確な作成を強く推奨します。
4. 財務・医療 POA(Power of Attorney)
種類 | 主な目的 | 発効タイミング |
---|---|---|
Durable Financial POA | 銀行取引・不動産売却・税務申告の代理 | 署名即時 or 無能力化時(Springing) |
Advance Health Care Directive | 医療方針・延命措置の希望、臓器提供 | 医師が無能力判定後 |
5. まとめ
エステートプランニングは一度きりの書類作成ではなく、ライフイベントと税法改正に応じたプロセスです。弁護士・CPAと連携し、リビングトラスト+遺言書+POAを三位一体で整備することで、家族の未来と資産を確実に守りましょう。
【免責条項 / Disclaimer】
本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の事案についての法律・税務アドバイスではありません。状況に応じた正確な判断のためには、必ずカリフォルニア州で登録された弁護士、公認会計士などの専門家にご相談ください。当ブログおよび著者は、本記事の利用により生じたいかなる損害についても一切の責任を負いかねます。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和