カリフォルニアで賃貸住宅を借りる前に知っておきたい法的ポイント。契約内容、敷金、立ち退き規制、家賃上昇制限まで、解説します。
カリフォルニア州で居住用住宅を借りる際には、日本とは異なる法律や規制が多く存在します。契約書にサインする前に理解しておくべき法的ポイントを、ご紹介します。
1. 書面による賃貸契約の重要性
カリフォルニアでは、1年を超える契約は原則として書面での契約が必要です。書面契約には以下の情報が明記されているか確認しましょう:
- 月額賃料と支払期限
- 敷金(セキュリティデポジット)の金額・返金条件
- 契約期間(定期か月極か)
- 修繕義務の分担(貸主 or 借主)
- ペット、喫煙、騒音などのハウスルール
2. セキュリティデポジット(敷金)の制限
カリフォルニア民法(Civil Code §1950.5)によって、敷金の上限は以下のように制限されています:
- 家具なし物件:家賃の2か月分まで
- 家具付き物件:家賃の3か月分まで
貸主は、退去後21日以内にデポジットを返還、または使用明細を通知する義務があります。
3. ハビタビリティ(居住可能性)の保障
貸主は、借主が安全かつ健康的に居住できる環境(ハビタブル)を提供する義務があります。たとえば:
- 電気・水道・暖房設備が正常に作動すること
- カビ・ゴキブリ・ネズミなどの衛生的問題がないこと
- 鍵・窓・火災警報器などの基本的な安全対策が施されていること
⚠ 修繕が必要な場合は、借主が通知すれば貸主が合理的期間内に対応する必要があります。
4. 不当な立ち退きからの保護(Just Cause)
2020年に施行されたAB 1482(California Tenant Protection Act)により、以下のような場合を除き、貸主は一方的に借主を立ち退かせることはできません:
- 賃料の不払い
- 著しい契約違反
- 建物の取り壊しまたはオーナー家族の入居(ただし法定通知義務あり)
立ち退き通知には、事前通告が必要です。
5. 家賃の上昇規制(Rent Control)
AB 1482 によって、対象となる物件では年間の家賃上昇率に上限が設けられています:
- 年間の増額は 5% + 物価上昇率(CPI) または 10%のいずれか低い方
※ただし以下は除外対象です:
- 築15年未満の新築物件
- オーナー居住の4戸以下の自主管理物件
- 市ごとのレントコントロール制度が優先される地域(例:ロサンゼルス市)
6. 敷金返還トラブルを防ぐためのひと工夫
退去時に「入居前からあったキズ・汚れ」をめぐって敷金が返還されないトラブルはよくあります。これを防ぐには:
- 入居直後に、室内全体の写真を撮影する(壁、床、設備の傷や劣化など)
- それらの写真を貸主または管理会社にメールで送って共有する
これにより、後日「そのキズは最初からあった」と証明しやすくなります。
免責事項
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、個別の法律相談には該当しません。具体的な案件に関しては、必ず弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和