田中良和国際法律事務所

カリフォルニア州で会社を解散するには?公告の有無による違い

カリフォルニア州で法人(株式会社やLLC)を解散する際、法的手続に沿った解散プロセスを正しく理解することが重要です。特に、解散時に「公告(publication)」を行うか否かによって、会社やその経営者が将来的に負う可能性のある責任や、清算プロセスの効率性が大きく変わってきます。

この記事では、カリフォルニア州における会社解散の基本手続と、「公告をする場合」と「公告をしない場合」の違いについて、解説します。

カリフォルニア州の法人(CorporationまたはLLC)を正式に解散するには、主に以下の手続が必要です:

  1. 取締役会および株主(またはLLCメンバー)の承認
  2. カリフォルニア州務長官(Secretary of State)への解散書類の提出(Form DISS STKなど)
  3. 税務当局(Franchise Tax Board)への通知と最終税務申告
  4. 負債・債務の清算
  5. 残余財産の分配
  6. (任意)公告による通知

この中で「公告(Notice to Creditors)」は義務ではなく任意ですが、特定の状況では非常に重要な役割を果たします。

公告とは、会社が解散手続中であることを一般債権者に通知するために新聞などに掲載する手続をいいます。これは、Corporations Code §1905(株式会社)やLLCの場合の§17707.06などに基づく手続です。

公告は、債権者に対して「○日以内に債権の申し立てをしてください」というような公式の機会を与えるために行われます。

比較項目公告をする場合公告をしない場合
債権者への通知新聞公告により広く通知可能既知の債権者に個別通知が必要
債権申立ての期間明示的に設定可能(例:90日)一定期間(通常4年)まで債権申立てのリスクあり
将来の責任リスクリスク軽減。時効が早く進行するリスクが継続。解散後も訴訟リスクが残る
コスト新聞広告費が必要費用負担は少ない
実務負担若干増加(公告原稿の作成・提出等)比較的簡素な手続で完了可能

公告は任意ですが、以下のようなケースでは公告を行うことを推奨します:

  • 顧客・業者・サプライヤーなど、不特定多数の債権者が存在する場合
  • 将来的な訴訟リスクを可能な限り軽減したい場合
  • 清算人または役員が解散後の責任追及を避けたい場合

一方、少人数の事業体で、すべての債権者が明確で既に精算済みの場合などは、公告を省略しても問題が生じにくいことがあります。

公告手続は面倒に思えるかもしれませんが、会社解散後の予期せぬ法的トラブルを防ぐ「保険」的役割を果たします。特に将来的に株主や役員が別の法人設立やビジネス活動を考えている場合、未精算債務による法的責任が新たな事業にも波及するリスクを避ける意味でも、公告を行う価値があります。

カリフォルニア州での会社解散は、単に書類を提出するだけでは終わりません。公告を行うか否かは、将来の法的リスクや債権者対応の観点から、慎重に判断すべきポイントです。

会社の清算・解散を検討している方は、弁護士にご相談ください。


【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律上のアドバイスを構成するものではありません。具体的な事案については、必ず弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

上部へスクロール