カリフォルニア州では、離婚手続きにおいて夫婦双方に財産を完全に開示する法的義務があります。しかし、残念ながら一方の配偶者が預金や資産を意図的に隠すケースも少なくありません。
この記事では、離婚判決が確定した後に、配偶者の財産隠匿が発覚した場合に取り得る法的手段について、具体例を交えながら解説します。
【例】夫が隠し口座に10万ドルを保有していた
例えば、ある離婚案件では、夫が離婚手続き中に開示を求められた際、個人の銀行口座は「存在しない」と申告していました。妻はそれを信じ、裁判所もそれを前提に財産分与の判決を出しました。
しかし、離婚から6か月後、妻が偶然、夫名義の口座に約10万ドルが存在していたことを発見。夫はその口座を離婚前に開設しており、会社の報酬や副収入をそこに蓄積していたのです。
このような場合、妻は以下の法的措置を講じることができます。
1. 離婚判決の取消しを求める(Set Aside Judgment)
カリフォルニア州家族法(Family Code)第2122条(f)により、財産の隠匿を理由として判決の取消しを求める申し立てが可能です。
- 詐欺または隠匿があったことを証明し、
- その事実を知った日から1年以内に申し立てを行う必要があります。
この申し立てが認められると、裁判所は財産分与の内容を再評価し、必要に応じて判決の全部または一部を取消すことができます。
2. 財産分与命令の修正と制裁(Sanctions)
カリフォルニア州では、財産の隠匿は重大な義務違反と見なされ、家族法第1101(h)により隠された財産の最大100%を相手方に帰属させる制裁が認められています。
上記の例では、夫の隠匿が故意であると裁判所が認定した結果、妻がその隠し口座の全額(10万ドル)を受け取る判決が下されました。
また、弁護士費用や裁判費用なども、妻側が請求し、夫に支払いを命じられることがあります(Family Code § 2107(c))。
3. 証拠収集のポイント
財産隠匿を主張するには、次のような証拠が重要になります:
- 隠匿された口座の銀行明細や残高証明
- 資金の出所(給料や取引の証拠)
- 離婚時の開示書類との不一致
- 元配偶者が意図的に虚偽申告した証拠(例:メール、メモ、第三者の証言)
特に、カリフォルニアでは財産開示が義務であるため、裁判所は不正行為に厳しい姿勢を取ります。
4. 申し立ての流れ
- Declaration(宣誓供述書)とともに、Motion(申し立て書)を家庭裁判所に提出
- 財産隠匿を示す証拠を添付
- 相手方に書面を正式に送達(通常はプロセスサーバーによる)
- 裁判所の審理後、再分与命令や制裁命令が出される可能性あり
5. 判決後に取れる主な対応まとめ
対応手段 | 法的根拠 | 申立期限 |
---|---|---|
判決の取消し | Family Code § 2122(f) | 発見から1年以内 |
再分与+100%制裁 | Family Code § 1101(h) | 詐欺があれば適時 |
制裁請求・弁護士費用 | Family Code § 2107(c) | 制限なし(原則として) |
まとめ
カリフォルニア州では、離婚時に財産を開示しないことは法的に重大な違反とみなされます。仮に離婚判決後に配偶者が財産を隠していたことが発覚した場合でも、適切な法的手段を講じることで不利益を回復できる可能性があります。
まずは事実関係を整理し、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的助言を構成するものではありません。具体的な状況に応じた対応については、カリフォルニア州の弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和