田中良和国際法律事務所

Chapter 11手続における「Trade Agreement」とは?

~日本企業が知っておくべき再建企業との取引契約~

アメリカの連邦倒産法(Chapter 11)の手続では、破産を申請した企業(債務者)が事業の継続と再建を目指す中で、重要な取引先との関係維持が不可欠です。
この文脈で登場するのが「Trade Agreement(取引契約)」です。
本記事では、このTrade Agreementの概要と、日本企業にとっての実務的なポイントを解説します。


Chapter 11の手続中に、債務者が特定の取引先(Vendor)と締結する契約で、以下のような内容が特徴です:

  • 申立前の未払い債権(Prepetition Claim)を一部または全額支払う
  • 申立後も継続して供給を受けることを条件とする
  • 従来と同等またはより良好な取引条件を維持することをVendorに求める

このように、債務者が事業継続のために必要不可欠な供給を確保するために、選定された取引先と交渉して締結されます。

  • 債務者の事業継続を支援
  • サプライチェーンの混乱防止
  • 債権者に対して一定の「回収の機会」を与える
  • 倒産手続中でも安定的に商品やサービスの提供を受けるための措置

Trade Agreementには、以下のような条項が含まれます:

  • Prepetition債権の支払い
  • 今後の納入・供給義務の継続
  • 従来の取引条件(価格、納期、与信など)の維持
  • 債務者が再度履行不能になった場合の対応(例:契約解除権)

⚖️ 裁判所の承認が必要な場合

Trade Agreementに基づき支払われるPrepetition債権の金額が大きい場合には、アメリカ連邦破産裁判所の承認が必要になります。

たとえば、2025年7月11日に裁判所は、MarelliがForeign Vendorに対して総額1,260,000,000ドル、Critical Vendorに対して110,000,000ドルのPrepetition債権支払いを承認しています。
これを超える支払いをする場合は、Marelliは別途裁判所の承認を得る必要があります。

  • 契約条項を慎重に確認すること
  • 債務者の信用状況や再建可能性を調査すること
  • 他の債権者より優遇される見返りとして、義務も負うことになる
  • 契約違反があった場合のリスクや救済方法を明確にしておくこと
  • 弁護士や現地専門家と連携し、Trade Agreementの内容を交渉・確認
  • 契約書に明示された支払いスケジュールや供給義務を把握する
  • 支払い金額が承認済みの上限内かどうかを常に確認する

Trade Agreementは、Chapter 11手続において債務者とVendorの双方にとって有益な制度です。ただし、十分なリスク評価と契約内容の把握が不可欠です。
日本企業としては、債権の回収というメリットと、継続的な供給義務という義務のバランスを見極めながら、慎重な判断が求められます。


📌 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案についての法律的助言を構成するものではありません。
具体的なケースについては、米国連邦倒産法に精通した弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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