カリフォルニア州では、結婚前に当事者間で将来の財産関係を明確にしておく「婚前契約(Prenuptial Agreement)」が法律的に認められています。将来の予期せぬトラブルを防ぐためにも、適切に作成された婚前契約は非常に有効です。
本記事では、カリフォルニア州で婚前契約に定めることができる内容、定められない内容、そして契約を有効にするための条件を詳しく解説します。
✅ 婚前契約で定めることができる内容
- 財産分与のルール:結婚前に保有している資産や、結婚後に取得した財産の取扱い(共同財産か個人財産か)を明確に定めることができます。
- 収入や投資収益の帰属:婚姻後に得られる収入(給料、配当、不動産収益など)をどちらの財産とするか合意することができます。
- 不動産の取り扱い:購入予定または既に保有している不動産の所有形態や分割ルールを明記できます。
- 負債の責任:学生ローンやクレジットカードなどの債務について、どちらが責任を負うのか事前に合意できます。
- ビジネスの保護:一方が運営する事業の権利や将来的な分与の排除など、ビジネスを守る内容を含めることができます。
- 相続権に関する取り決め:法定相続とは異なる方法で財産を配分することも合意できます(遺言・信託との整合性が必要です)。
❌ 婚前契約で定められない内容
- 子どもの養育や親権に関する取り決め:未成年の子どもに関する養育費や親権は、裁判所が子の最善の利益に基づいて判断するため、婚前契約で拘束的に決めることはできません。
- 配偶者扶養(Spousal Support)の一方的な放棄:公平性に欠ける配偶者扶養の放棄条項は、裁判所により無効とされる可能性があります。特に一方に弁護士がいなかった場合は注意が必要です。
- 道徳的・私的な約束:家事の分担や浮気の有無など、私生活上の行動ルールは法的拘束力を持ちません。
⚖️ 婚前契約を有効にするための法的要件(カリフォルニア州)
- 契約は書面でなければならない:口頭での合意は無効です。必ず書面で署名が必要です。
- 自由意思によって署名されたこと:無理やり署名させたり、圧力をかけた場合は無効とされる可能性があります。
- 署名前に少なくとも7日間の検討期間を設けること(7-Day Rule):相手に契約を提示してから最低7日間の検討期間を設ける必要があります。
- 独立した弁護士による法的助言が推奨される:双方がそれぞれ独立した弁護士からアドバイスを受けることが、契約の有効性を確保するうえで重要です。
📘 ケーススタディ:起業家と婚前契約
Yさんはテクノロジー会社を創業し、多額の株式を保有していました。婚前契約では、「会社の株式およびその将来の増価益はすべてYの個人財産とし、離婚時に配偶者は請求権を持たない」と明記。また、結婚前に契約を作成し、相手に7日間以上の検討期間を与えたうえで、双方が独立した弁護士を雇いレビューを受けました。
このような手順を踏むことで、契約は裁判所で有効と認められ、後の紛争を避けることができました。
✅ まとめ
婚前契約は、結婚前にお互いの将来を見据えて「もしも」のリスクを整理する大切な法的手段です。特にカリフォルニア州では共同財産制度が採用されているため、資産の保護や公平なルール作りに有効です。
婚前契約を検討されている方は、契約内容を一方的に進めるのではなく、7日間のレビュー期間を設け、双方が弁護士から適切な助言を受けることを強くお勧めします。
⚠️ 免責事項(Disclaimer)
本記事は情報提供を目的としており、特定の事案に対する法的アドバイスではありません。婚前契約をご検討の場合は、カリフォルニア州弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和