2024年7月29日、世界的な自動車部品メーカーであるマレリホールディングスは、米連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用下での再建計画において、ストラテジック・バリュー・パートナーズ(SVP)を中心とする外資連合の支援を受ける方針を正式に表明しました。
外資連合がマレリ再建のスポンサーに
マレリの再建を主導するのは、以下の外資系金融機関を中心とした5社連合です:
- Strategic Value Partners(SVP)
- ドイツ銀行(Deutsche Bank)
- MBKパートナーズ
- その他2社(詳細未公表)
同連合は、**「オーバービッド期間(Overbid Period)」**と呼ばれる競争入札期間を経て、最も有利な再建案を提示したグループと認定されました。この期間中には他の入札者からの提案も受け付けられましたが、SVP連合を上回る条件の提示はありませんでした。
これにより、マレリは今後、SVPらの支援を受けて事業再建を図り、**2026年のチャプター11脱却(Exit from Chapter 11)**を目指します。
米破産裁判所によるDIPファイナンス承認
2024年7月24日、デラウェア州の米連邦破産裁判所は、マレリに対する**追加のDIPファイナンス(Debtor-in-Possession Financing)**を承認しました。
- すでに取得済みの:5億1,900万ドル
- 今回新たに承認された追加額:1億3,000万ドル
- 総計:約6億4,900万ドル(約960億円)
この資金は、債務者であるマレリが再建中も業務を継続し、サプライヤーや従業員に対する支払いを滞りなく行うために活用されます。
日本企業にとっての意味とは?
マレリの再建過程において、日本企業が注意すべきポイントは以下のとおりです:
1. 債権者としての対応
チャプター11手続では、「Proof of Claim(債権届出書)」の提出が必要不可欠です。期限内に提出しなければ、債権が法的に認められないおそれがあります。
2. DIPファイナンスの優先順位
破産裁判所の認可を受けたDIPファイナンスは、既存債権者よりも優先弁済権を持つことになります。したがって、一般債権者の回収可能性は相対的に下がる可能性があります。
3. 再建スポンサーの影響
SVPなどの新たなスポンサーによる経営方針の転換や契約条件の見直しが行われる可能性があります。再建後の取引継続を希望する企業は、契約書の内容や支払条件等の再確認を行うべきです。
まとめ:マレリの再建は外資主導、今後の動向に注目
マレリのチャプター11は、日本の多くの取引企業にとって重大な関心事項です。今回の外資連合による支援決定により、再建の道筋は明確化しつつありますが、最終的な再建計画の内容次第では、取引先にとって大きな影響が生じる可能性があります。
免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の法的助言を構成するものではありません。実際の案件については、米国破産法および契約法に詳しい弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和