かつて多くの日本人駐在員や研究者が暮らしていたベイエリア。しかし近年、「以前より日本人の姿が減った」という声をよく聞きます。日系アメリカ人を除いた現在の「日本人居住者(日本国籍者)」に限定して、その人数と職業傾向を解説します。
人口:ベイエリア在住の「日本人」は減少傾向
● 総領事館の登録ベース
- 在サンフランシスコ日本国総領事館の統計(2023年10月時点)によれば:
- ベイエリアの在留邦人数:約28,000人
- サンフランシスコ市、サンノゼ、オークランド、バークレー、マウンテンビューなどを含む
ピーク時(2015〜2016年)は3万人超とされ、日系企業の駐在縮小・円安・生活費高騰の影響で年々微減傾向にあります。
● 特徴的な傾向
- 駐在員・その家族が中心だが、技術系の長期居住者(永住権保持者含む)も増加
- 学生・ポスドク・起業家ビザでの滞在も一定数存在
- コロナ後に帰国し、そのまま戻らない世帯も多い
職業:駐在・専門職・個人事業の3大グループ
1. 駐在員(日本企業の現地法人勤務)
- 商社、メーカー、銀行、IT企業などの日本本社から派遣
- トヨタ、日立、三菱商事、ソニー、伊藤忠、MUFGなどが代表例
- 勤務先はサンノゼ・サンタクララ・サンマテオ郡に集中
2. 技術・研究職(H-1BやOビザ、永住権保持者)
- Google、Apple、NVIDIAなどの米系企業に勤務
- ソフトウェアエンジニア、AI研究者、PMなどが多い
- 大学院出身者が多く、OPT→H-1B→永住権へ移行するケースも
3. 自営業・フリーランス・教育系
- 日本語教師、補習校講師、通訳・翻訳業、ピアノや書道教室など
- 美容院、歯科、カウンセラー、ベビーシッター等の日本語サービス
- YouTuber、ライター、リモートワーカーなども増加
生活の現実:家賃と教育費のプレッシャー
- 1ベッドルームの家賃相場:月額3,000〜4,500ドル
- 日本語補習校の学費:月額300ドル前後
- 円安により、日本円での収入の実質価値が下がっている
まとめ
項目 | 現状(2025年時点) |
---|---|
在留日本人数 | 約28,000人(ピークより微減) |
主な就業形態 | 駐在員、技術者(H-1B)、教育・通訳・自営業 |
地域分布 | サンマテオ郡、サンタクララ郡が中心 |
家計事情 | 生活費・教育費の上昇と円安で非駐在層にとって厳しい |
かつて「駐在員の街」とも言われたベイエリアの日本人社会は、今では多様化と分散化が進んでいます。生活費の高さや国際的競争の中で、高度人材や自営業層が主軸となる時代に移り変わっているといえるでしょう。
今後もベイエリアにおける日本人の動向は、「駐在から個人の時代へ」という大きな潮流を反映し続けるはずです。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和