田中良和国際法律事務所

カリフォルニアでは「飲酒運転」を“Drunk Driving”とは呼ばない?

日本でお酒を飲んで車を運転した場合、一般的に「飲酒運転」と言います。
この言葉からは、まるで酒を飲みながらハンドルを握っているようなイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、実際には、酒を飲んだ後に血中アルコール濃度が一定以上ある状態で運転すれば、「飲酒運転」となります。

さらに、日本の道路交通法では、血中アルコール濃度が軽い場合は「酒気帯び運転」、重い場合は「酒酔い運転」として区別されます。

  • 酒気帯び運転:呼気1リットル中のアルコール濃度が 0.15mg以上(=血中アルコール濃度おおよそ0.03%程度
  • 酒酔い運転:アルコールの影響により正常な運転ができない状態(数値ではなく、警察官による判断)

一方、カリフォルニア州を含むアメリカでは、「飲酒運転」にあたる行為は、**“Drunk Driving”**とはほとんど呼ばれません。

代わりに、使用される法的な用語は “DUI”
これは “Driving Under the Influence” の略で、**「影響下での運転」**という意味です。

カリフォルニア州刑法(Vehicle Code Section 23152)では、

  • DUI(酒や薬物の影響下の運転)
  • DUI of Alcohol / DUI of Drugs(アルコールまたは薬物によるDUI)
    というように、法律上も「alcohol」や「drunk」とは必ずしも限定されていません。

この違いには、カリフォルニアにおけるDUIの対象範囲の広さが関係しています。

日本では、飲酒運転=お酒の摂取による影響が前提ですが、
カリフォルニア州では、酒だけでなく、薬物(合法・違法問わず)や処方薬の影響で運転能力が低下していても、**すべて「DUI」**として扱われます。

たとえば:

  • マリファナ(合法でも運転前の使用は禁止)
  • 睡眠薬や抗うつ薬などの処方薬
  • 違法薬物(コカインや覚醒剤など)

これらの影響で正常な運転ができない状態であれば、アルコールを全く飲んでいなくてもDUIで逮捕される可能性があります。

つまり、「DUI」はアルコールに限定せず、運転能力に影響を与えるすべての物質が対象なのです。



ここで、日本の「酒気帯び運転」とカリフォルニア州の「DUI」の血中アルコール濃度(BAC)の基準値を比較してみましょう。

地域違反名血中アルコール濃度(BAC)の基準
日本酒気帯び運転呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上(=おおよそBAC 0.03%程度
カリフォルニアDUI(21歳以上)BAC 0.08%以上

このように、日本の酒気帯び運転の基準値(BAC約0.03%)は、カリフォルニア州のDUIの基準(0.08%)よりも低く設定されています
つまり、数値を見ると、日本の方が厳しく取り締まっています。


この違いには、国ごとの価値観や法制度、交通安全に対する社会的な考え方が反映されています。

  • 日本では「飲んだら乗るな」が基本原則で、微量でもアルコールが検出されれば違反となり得る、厳格な姿勢が取られています。
  • カリフォルニア州では「運転に支障が出るレベルはNG」という基準が用いられています。

ただし、カリフォルニアではBACが0.08%を超えた場合は一律にDUIとして刑事罰の対象になりますし、事故を起こせばたとえ0.05%でも起訴される可能性があります


このように、日本とカリフォルニアでは、飲酒運転の規制に対するアプローチが異なります。
基準値が高いから「アメリカの方が緩い」というわけではなく、「何を重視しているか」「どう取り締まるか」の違いなのです。

数字の違いの背後には、各国の文化・交通事情・法政策の違いがあることを理解することが、法理解につながります。


カリフォルニア州では、以下のように年齢や車種によってDUIの基準が異なります:

  • 21歳以上の一般ドライバー:BAC 0.08%以上
  • 商用車ドライバー:BAC 0.04%以上
  • 21歳未満のドライバー:BAC 0.01%以上(ゼロ・トレランス)

さらに、薬物や処方薬の影響で運転能力が低下していれば、たとえBACが0.00%でもDUIに問われる可能性がある点に注意が必要です。


まとめ:用語の違いが示す法的視点の違い

日本では「お酒」を中心とした概念で運転を規制していますが、
カリフォルニアでは「運転能力に影響を与えるあらゆる物質」が対象です。

そのため、用語も “Drunk Driving” ではなく、より包括的な “DUI” が使われているのです。

国や州ごとの法律の違いを知ることは、交通ルールを守るうえでも重要です。


免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを構成するものではありません。具体的なご相談については、カリフォルニア州弁護士までお問い合わせください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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