離婚を考えている方にとって、どこで離婚手続きを行うかは重要な決定事項の一つです。カリフォルニア州では、特定の居住要件を満たせば州内の裁判所で離婚訴訟を提起することができます。本記事では、カリフォルニア州の離婚における管轄権について詳しく解説します。
カリフォルニア州の離婚管轄権の基本要件
カリフォルニア州で離婚訴訟を提起するためには、次の居住要件を満たす必要があります。
1. 州レベルの要件
- 夫婦のいずれか一方が、カリフォルニア州に少なくとも6か月以上継続して居住していること
2. 郡レベルの要件
- 離婚訴訟を提起する郡に少なくとも3か月以上継続して居住していること
事例で理解する
事例:
- 夫:ロサンゼルス郡の実家に1年間居住
- 妻と娘:カリフォルニア州外に居住(州での居住歴なし)
この場合、夫は以下の要件を満たすため、ロサンゼルス郡の裁判所で離婚訴訟を提起できます。
- ✅ 州要件:カリフォルニア州に6か月以上居住
- ✅ 郡要件:ロサンゼルス郡に3か月以上居住
重要なポイント: 妻や娘がカリフォルニア州に住んだことがなくても、夫が居住要件を満たせば、カリフォルニア州で離婚訴訟を提起できます。
管轄権の限界:事物管轄と人的管轄
カリフォルニア州の裁判所が離婚を扱えるからといって、全ての事項について判断できるわけではありません。
ここで重要なのが、**事物管轄(subject matter jurisdiction)と人的管轄(personal jurisdiction)**です。
裁判所が判断できる可能性が高い事項
- 婚姻関係の解消(離婚の成立)
- カリフォルニア州内にある財産の分与
- カリフォルニア州内の債務処理
- 配偶者支援(アリモニー)
管轄が制限される可能性がある事項
- 子の監護権・面会権:子が他州に住んでいる場合、UCCJEA(統一子監護権管轄執行法)により、子の「ホームステート」の裁判所が優先管轄を持つことが多い
- 他州の不動産:不動産が他州にある場合、その州の法律が適用される可能性がある
- 他州で発生した債務:債務の性質や契約条件により、他州の裁判所の管轄が関与することがある
実務上の注意点
1. 早期の法的助言
複数の州にまたがる離婚案件では、提起する州によって結果が異なる場合があります。早期にカリフォルニア州と海外の離婚案件の経験豊富な家族法弁護士に相談しましょう。
2. 子の最善の利益
子がいる場合、居住地や学校、地域とのつながりを総合的に考慮し、適切な管轄地を選択する必要があります。
3. 他州での手続きとの競合
配偶者が他州で先に離婚訴訟を提起している場合、管轄をめぐる複雑な争いが発生する可能性があります。
まとめ
カリフォルニア州で離婚訴訟を提起するには、明確な居住要件があります。しかし、複数の州に関連する案件では、管轄権の問題が複雑になるため、事前に法的アドバイスを受けることが重要です。
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としており、具体的な法的助言を構成するものではありません。個別の事情については、資格を持つ弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和