田中良和国際法律事務所

カリフォルニア離婚訴訟とメディエーション合意の効力〜Settlement Agreementはそのまま判決になるのか?〜

カリフォルニア州の離婚訴訟では、裁判所の正式な判決を経ずに、メディエーション(調停)で当事者がSettlement Agreement(和解契約)を締結するケースが多くあります。
しかし、このSettlement Agreementは自動的に離婚判決(Judgment)となるわけではありません
本記事では、親権・監護権・配偶者扶養(Spousal Support)・共有財産(Community Property)など、合意内容がどのように扱われるのかを、解説します。


1-1. Settlement Agreementの性質

  • メディエーションで締結されたSettlement Agreementは、当事者間の契約です。
  • 内容が明確かつ署名が適法に行われていれば、契約としては有効です。

1-2. 離婚判決(Judgment)になるための手続き

  • Settlement Agreementは、裁判所に提出し、裁判官の承認を得て初めて判決の一部として効力を持ちます
  • 一般的には、FL-180(Judgment) または FL-250(Stipulated Judgment Attachment) の添付書類として提出されます。
  • 裁判官は、合意が公序良俗や子の最善の利益(Best Interest of the Child)に反しないかを審査します。

  • Settlement Agreementで親権や監護権の取り決めをしても、裁判官は必ず「子の最善の利益」の観点から審査します(Family Code §3011)。
  • 裁判所が不適切と判断すれば、その部分は修正を命じることがあります。
  • Parenting Plan(養育計画)を詳細に定めることで、承認されやすくなります。

  • 当事者間で金額や支払期間を決めることは可能です(Family Code §4330)。
  • 扶養権放棄(Waiver of Spousal Support)が認められるかは事案によります。
  • 裁判所は、合意が一方的に不公平(Unconscionable)でないかを確認します。

  • カリフォルニアは共同財産制(Community Property System)を採用しており、原則50/50での分割が求められます(Family Code §2550)。
  • 当事者間で異なる割合に合意することは可能ですが、双方が十分な情報開示(Full Disclosure)を行い、同意していることが条件です。
  • 隠し財産や不十分な開示が後で判明した場合、合意は無効化される可能性があります(Family Code §2120-2129)。

  1. 必ず書面化 – Settlement Agreementは必ず書面で作成し、当事者双方が署名・日付を入れること。
  2. 裁判所提出と承認 – 合意後は速やかに裁判所へ提出し、判決に組み込む手続きを行うこと。
  3. Notaryによる署名認証(推奨) – 署名の真正性を争われないように、公証人立会いでの署名が望ましい。
  4. 子に関する合意は慎重に – 親権・監護権の合意は、将来の変更(Modification)の可能性を念頭に置く。

まとめ

メディエーションでのSettlement Agreementは、当事者にとって柔軟で早期解決が可能な手段ですが、そのまま自動的に離婚判決になるわけではありません。必ず裁判所に提出し、承認を得ることが必要です。特に、親権や監護権は裁判所の厳しい審査を受けるため、法的助言を受けながら合意内容を作成することが重要です。


免責事項
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法的助言ではありません。具体的な事案については、必ずカリフォルニア州弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

上部へスクロール