カリフォルニア州の民事訴訟において、ディスカバリー(Discovery:証拠開示手続)は裁判の行方を大きく左右する重要なプロセスです。訴訟当事者は、互いに情報や証拠を開示し合う義務があり、証拠隠しや不十分な対応は制裁の対象となることもあります。
カリフォルニア州におけるディスカバリーの基本的な要件と手順について解説します。
ディスカバリーとは?
ディスカバリーとは、裁判の前段階で当事者同士が相手方から情報・証拠を入手する制度です。カリフォルニア州民事訴訟法(California Code of Civil Procedure, CCP)に規定され、訴訟の公正性と効率性を確保するために設けられています。
目的
- 相手方の主張や証拠を把握する
- 不意打ちを防止し、公平な審理を実現する
- 和解交渉の材料とする
ディスカバリーの主な手段
カリフォルニア州の民事訴訟では、以下の手段が一般的に利用されます。
- 文書提出要求(Request for Production of Documents)
相手方に対して契約書、メール、会計資料などの提出を求めます。 - 特定質問書(Interrogatories)
書面で質問を送付し、相手方に回答を求めます。標準質問(Form Interrogatories)と特別質問(Special Interrogatories)があります。 - 宣誓供述書(Requests for Admission)
事実や法的争点の認否を相手に求めることで、争点を絞り込みます。 - 証人尋問(Depositions)
裁判前に証人や当事者に対して口頭で質問を行い、記録を残します。 - 身体検査・精神鑑定(Physical/Mental Examinations)
人身損害などが争点の場合、専門家による検査が命じられることがあります。
手続の流れと期限
カリフォルニア州では、ディスカバリーには厳格な期限が設けられています。
- 訴状提出後、最初の会合(Case Management Conference)前後に開始
- 原則として、裁判(Trial)90日前までに完了
- 裁判所のスケジュール命令(Scheduling Order)に従う必要あり
特に遅延や不完全な回答は、裁判所から金銭的制裁(monetary sanctions)や証拠排除のペナルティを受ける可能性があります。
実務上のポイント
- 早期の計画立案:訴訟戦略に基づいて、どの証拠をどのタイミングで請求するかを検討する。
- 相手方との協議(Meet and Confer):ディスカバリーの範囲や方法について、事前協議が義務付けられています。
- 電子データの扱い(e-Discovery):メールやSNSの履歴など、電子証拠の開示義務も増加しています。
- 秘密保持(Privilege):弁護士依頼者間の秘匿特権(Attorney-Client Privilege)や弁護士作業製品(Work Product Doctrine)は例外として保護されます。
まとめ
カリフォルニア州のディスカバリー制度は、訴訟当事者にとって負担が大きい一方で、適切に活用すれば訴訟を有利に進める強力な武器となります。ディスカバリーの不備は不利な結果につながる可能性が高いため、専門の弁護士による戦略的な対応が不可欠です。
⚖️ 法的免責事項
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としたものであり、具体的な事案に対する法律相談ではありません。実際の訴訟やディスカバリー対応にあたっては、必ずカリフォルニア州における経験豊富な弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和