DMCA Safe Harborとは?
アメリカで消費者向けにコンテンツを販売するためのプラットフォームを提供する企業から、プラットフォームに提供されたコンテンツが他人の著作権を侵害している場合に、プラットフォーマーが責任を取らないといけないか、という質問を受けます。
アメリカでは、プラットフォーマーが一定の要件を満たすと、コンテンツの著作権侵害の責任を追わなくてよいという制度があり、DMCA Safe Harborといいます。DMCAはDigital Millennium Copyright Actの略です。
■ DMCAセーフハーバーとは
DMCA(Digital Millennium Copyright Act)17 U.S.C. §512は、ユーザーがアップロードしたコンテンツが著作権を侵害した場合でも、一定の条件を満たせばサービス提供者の責任を限定する仕組みを定めています。
対象となるのは、主に次のようなサービスです。
- 動画投稿サイト
- SNS
- ECサイト(商品画像・レビュー投稿などがある場合)
- フォーラム、掲示板
- クラウドストレージサービス
- 成人向けプラットフォーム
- ファンサイト・ライブ配信サービス
ユーザーがコンテンツを投稿できるオンラインサービスは、一般的にこの規定の対象に該当します。
■ セーフハーバーの適用要件
DMCAの保護を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
① DMCA指定エージェント(Designated Agent)の登録
著作権侵害通知を受け取る窓口を、U.S. Copyright Office に登録します。
オンラインでの登録が必須で、3年ごとの更新も必要です。
② 通知と削除(Notice and Takedown)への対応
著作権者から有効なDMCA通知が届いた場合には、次の対応が求められます。
- 該当コンテンツを迅速に削除またはアクセス不能にする
- アップロードしたユーザーへ通知する
- ユーザーが反論(Counter Notice)を提出した場合、著作権者に転送する
- 著作権者が10〜14営業日以内に訴訟を提起しない場合、コンテンツを復元できる
③ 侵害を「知っていないこと」
サービス提供者が著作権侵害を認識していたにもかかわらず、対応を行わなかった場合は保護の対象外となります。
④ 著作権侵害による利益を得ていないこと
著作権侵害が行われている状況を管理し、そこで利益を得ている場合は保護が適用されません。
⑤ 再犯者ポリシーの整備と運用
著作権侵害を繰り返すユーザーの利用を停止する方針を、利用規約などで明示し、実際に運用する必要があります。
■ DMCA通知(Notice)の要件
有効なDMCA通知は、次の内容を含んでいる必要があります(17 U.S.C. §512(c)(3))。
- 著作権者または代理人の署名
- 対象となる著作物の特定
- 侵害しているコンテンツのURLなどの位置情報
- 無断利用であることの声明
- 連絡先情報
- 虚偽申告でないことの宣誓
上記のいずれかが欠ける場合、通知として有効でないことがあります。
■ セーフハーバーが適用されない主なケース
次のような場合、DMCAによる責任制限を受けられないことがあります。
- DMCA指定エージェントを登録していない
- 侵害を認識していながら放置した
- 違法アップロードを促すような運営を行っている
- 通知削除手続きを適切に実施していない
- 再犯者ポリシーが存在しない、または機能していない
■ 成人向けプラットフォームやAI系サービスにも適用されるか
ユーザーがコンテンツを投稿できる構造であれば、DMCAは通常適用されます。
- AI画像生成
- 成人向けコンテンツ販売
- ライブチャット
- 同人誌配信
- SNS型プラットフォーム
サービスの形態に関わらず、ユーザー投稿型であればDMCA対策が必要になることが多いです。
■ 日本企業が注意すべき点
米国向けにサービスを展開する日本企業がよく直面する問題として、以下が挙げられます。
- DMCAエージェント未登録
- DMCAポリシーの未整備
- Counter Notice の手続きが未用意
- Takedown Notice 処理の体制不足
- 利用規約に必要な条項がない
米国でオンラインサービスを提供する場合、これらの点を事前に整理することが必要となります。
■ まとめ
DMCAセーフハーバーは、ユーザーによる著作権侵害への対応についてルールを定める制度であり、適切に運用することでサービス提供者の責任が限定される可能性があります。
一方で、必要な登録や手続を行わない場合、責任が発生することがあります。
■ 免責文言(Disclaimer)
本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案についての法的助言を提供するものではありません。
個別の状況については、適切な専門家への相談を検討してください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ・ベイエリア・ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
