田中良和国際法律事務所

弁護士なしで取り返す!個人請求上限$12,500の「Small Claim Court」

私の事務所に数千ドルのお金を払ってもらえないので、手伝ってほしいという相談があります。通常弁護士に依頼して裁判をすると、弁護士費用のほうが高くなるので、弁護士費用を払って裁判をして、数千ドルを回収するのは現実的ではありません。そこで、Small Claim Court(少額訴訟)が活用できます。裁判は、弁護士に依頼しなくても、自分で行うことができますし、Small Claim Courtは弁護士に依頼しないことを前提に、制度が設計されています。一般的な訴訟の額としては高額ではなくても、個人にとっては、数千ドルでも高額で、大事なお金です。Small Claim Courtについて解説いたします。

「貸したお金が返ってこない」 「アパートの敷金(Security Deposit)が不当に差し引かれた」

こうしたトラブルに巻き込まれた時、弁護士を雇うと費用倒れになってしまう金額帯(数千ドル〜1万ドル程度)の解決策として、カリフォルニア州には**「スモールクレームコート(少額訴訟)」**という制度があります。

最大の特徴は、**「弁護士は法廷に立てない(代理人になれない)」**こと。つまり、自分で手続きを行い、自分で裁判官に説明しなければなりません。

「英語で裁判なんて無理…」と諦める前に、まずはその流れを知ってください。手続き自体は非常にシンプルに設計されています。今回は、訴えを起こしてから判決が出るまでの「具体的な4つのステップ」を解説します。


いきなり裁判所に書類を提出することはできません。カリフォルニア州法では、訴訟を起こす前に、必ず相手に対して「支払いの請求」を行い、解決を試みることが義務付けられています。

  • 何をするか: 相手に対して「Demand Letter(請求書)」を送ります。
  • 書く内容: 「いつまでに」「いくらを」「なぜ(理由)」支払ってほしいか。そして「支払われない場合は法的手段を取る」という意思を明記します。
  • ポイント: Eメールやテキストメッセージでも証拠にはなりますが、追跡番号付きの郵便(USPS Certified Mail with Return Receipt Requested)で送ると、「相手が受け取った(あるいは受け取りを拒否した)」という強力な証拠になります。

相手が支払いに応じない場合、いよいよ裁判所へ申し立てを行います。

  • 書類: 「Plaintiff’s Claim and ORDER to Go to Small Claims Court (Form SC-100)」というフォームに記入します。原告(あなた)と被告(相手)の住所、請求金額、理由などを記載します。
  • 提出先: 被告の居住地、またはトラブルが起きた場所(契約締結地や事故現場など)を管轄する裁判所のClerk’s Officeに提出します。現在はオンライン(e-filing)で受け付けている裁判所も増えています。
  • 手数料: 請求金額によりますが、$30〜$75程度(2025年現在)の申立手数料(Filing Fee)がかかります。

ここが日本人にとって一番の落とし穴です。 アメリカの訴訟ルールでは、「原告(あなた自身)が直接、被告に訴状を渡すこと」は禁止されています。必ず第三者を通じて、相手に「訴えられたこと」を知らせなければなりません。これを「送達(Service)」と呼びます。

以下のいずれかの方法で行います。

  1. Sheriff(保安官)に依頼する: 手数料がかかりますが確実です。
  2. Process Server(専門業者)に依頼する: 費用はかかりますが、逃げ回る相手などを見つけるプロです。
  3. 利害関係のない第三者(友人など)に頼む: 18歳以上で、この訴訟に関係のない人であれば誰でも可能です。

送達が完了したら、その証明書(Proof of Service)を裁判所に提出して、初めて裁判の準備が整います。

指定された日時に裁判所へ行きます。現在はZoomなどのリモート出廷を認めている裁判所も多いですが、証拠を見せるためには対面の方がスムーズな場合もあります。

  • 当日の流れ: 一つの部屋に多くの案件が待機しており、順番に呼ばれます。 自分の番が来たら、裁判官の前に立ちます(弁護士は同席できません)。
  • プレゼンテーション: 裁判官に証拠(契約書、写真、請求書、やり取りのログなど)を提示し、事実関係を説明します。相手(被告)にも反論の機会が与えられます。
  • 判決: その場で言い渡されることもありますが、多くの場合は後日、郵送で判決(Judgment)が届きます。

冒頭で「弁護士は法廷に立てない」と書きましたが、**「準備の手伝い」**をすることは完全に合法です。

  • 「Demand Letter(請求書)の内容をチェックしてほしい」
  • 「フォーム(SC-100)の書き方が合っているか不安」
  • 「法廷で裁判官にどう説明すればいいか、リハーサルをしてほしい」

こうした**「Limited Scope Representation(限定的な代理・法的助言)」**として弁護士を利用する方は非常に多いです。数万円の相談料で、手続きのミスを防ぎ、勝訴の確率を高めることができます。

「自分一人でやるのは不安だけど、弁護士に全部任せるお金はない」。そんな時は、スポット相談(単発の法律相談)を活用して、賢く戦ってください。


※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。具体的な管轄や最新の手数料については、各裁判所のWebサイトをご確認ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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