弊事務所に相談があった案件で、損害額が少額の場合があります。損害額が少額の場合、弁護士に依頼すると、弁護士報酬の方が高くなったり、損害を回復しても受け取れる額が少なくなったりします。そのような場合に、Small Claimの制度が活用できます。
「相手にお金を返してほしい」「敷金が返ってこない」「修理代を払ってくれない」こうした金銭トラブルを、できるだけ低コスト・短期間で解決したい場合に選択肢になるのが、カリフォルニア州の**少額訴訟(Small Claims)です。
少額訴訟は、通常の民事裁判よりも手続が簡易で、当事者本人が進めやすいように設計されています。
少額訴訟のメリット
1)弁護士を使わないので費用を抑えられる
少額訴訟では、原則として審理(hearing/trial)の場で弁護士が代理人として「出廷して主張立証する」ことはできません。そのため、一般的な民事裁判よりも弁護士費用がかからず、低コストになりやすいのが大きな特徴です。
※ただし、裁判の前後に相談(助言)を受けることは可能です。
2)判決までの期間が短い(早く「期日」が入る)
少額訴訟はスピード感があり、申立て後は通常約1〜2か月で期日(trial)が入ると案内されています。
また、法律上も、原則として申立て後20日〜70日の間に審理日程を入れる枠組みが定められています。
いくらまで請求できる?(上限額)
カリフォルニア州の少額訴訟は、当事者の属性によって上限が異なります。
- 個人(natural person):原則 最大 $12,500
- 法人等(会社・団体など):原則 最大 $6,250
さらに、(濫用防止のため)一定額を超える請求を年に何度も出すことには制限があります。
申立て費用(フィリング・フィー)はどのくらい?
少額訴訟の申立手数料は、請求額に応じて段階的です(「頻繁に多数の少額訴訟を起こす人」には別枠の手数料が設定されています)。
例(州の案内):
- 請求額 $1,500 まで:$30
- $1,500 超〜$5,000 まで:$50
- $5,000 超〜$12,500 まで:$75
- 過去12か月で12件超を提起している場合:$100
費用が厳しい場合は、**Fee Waiver(手数料免除)**を申し立てられる場合もあります。
少額訴訟の基本的な流れ(ざっくり)
- 請求・交渉(支払い要求の書面やメールを残す)
- 裁判所に申立て(フォーム提出+手数料)
- 送達(Service):相手に正式に書類を届ける(ここが超重要)
- 審理(trial):証拠を出して裁判官が判断
- 勝訴後の回収(collection):勝っても自動で振り込まれるわけではない点に注意
「勝ったのに払ってくれない」場合は?
少額訴訟で勝訴しても、相手が任意に支払わない場合は、別途、回収手続を検討します。州の案内では、例えば次のような手続が紹介されています。
- Writ of Execution を取得して、銀行差押え(bank levy)や給与差押え(wage garnishment)を進める
- 不動産にリーエン(担保)を付けるために Abstract of Judgment を利用する
注意点:少額訴訟は「万能」ではありません
1)原則、金銭賠償の手続(差止め等は基本できない)
少額訴訟は基本的に「お金」の請求が中心で、差止め(injunction)などの衡平救済は、法律が明示的に認める場合に限られるという建て付けです。
2)原告(請求した側)は原則、控訴できない
少額訴訟の大きな特徴として、原告は自分の請求については原則として控訴できません(例外として、相手から反訴され、その反訴で負けた部分は控訴できる場合があります)。
「負けたらやり直せる」とは限らないので、どの裁判手続を選ぶかは最初に検討が必要です。
少額訴訟が向いているケース/向いていないケース
向いている
- 請求額が上限内で、争点が比較的シンプル(未払い・敷金返還・立替金など)
- 証拠(契約書、請求書、支払い履歴、メッセージ等)を揃えやすい
- 早期解決・低コストを優先したい
向いていないことが多い
- 差止め・名誉回復など「お金以外」の救済が主目的
- 法律関係が複雑で、証拠収集(ディスカバリー)が重要
- 「控訴できないリスク」を避けたい(原告側)
まとめ
カリフォルニアの少額訴訟は、弁護士費用をかけずに進めやすく、比較的早く期日が入るため、「少額の金銭トラブルを、コストを抑えて早期解決したい」という場面で有力な選択肢です。
一方で、原告は原則控訴できないなど、通常訴訟にはない重要な制約もあります。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士、日本弁護士
田中良和
