不動産を購入するときや、亡くなった方が残した相続財産を調査するときには、その不動産を現在誰が所有しているのかを正確に確認する必要があります。
住所をインターネットで検索すると、所有者と思われる人物の氏名や購入時期、固定資産税の評価額などが表示されることがあります。しかし、ウェブサイトに表示された氏名だけで、その人が現在の法的な所有者であると判断することはできません。
不動産の正確な権利関係を確認するためには、記録されたDeed(権利証書)や関連書類をたどり、Chain of Titleを確認することが重要です。
カリフォルニアの不動産記録制度
カリフォルニアでは、不動産に関するDeed、Deed of Trust、Lienなどの書類は、原則として不動産が所在するCounty(郡)のRecorder’s Officeに記録されます。
日本の不動産登記簿のように、一つの書類を見れば現在の所有者と権利関係がすべて確定できるとは限りません。County Recorderは提出された書類を受理し、記録し、検索できるように管理しますが、誰が法的な所有者であるかを最終的に判断する機関ではありません。実際に、Sonoma CountyのClerk-Recorderも、不動産所有権は法的判断であり、Recorderにはその判断を行う権限がないと説明しています。
そのため、現在の所有者を調べる場合は、最新のDeedだけでなく、それ以前の所有権移転の経緯や、その後に記録された関連書類も確認する必要があります。
Chain of Titleとは
Chain of Titleとは、ある不動産について、過去の所有者から現在の所有者に至るまで、所有権がどのように移転してきたかを示す一連の記録です。
例えば、次のような流れを確認します。
- Aが不動産を購入した
- AがBにGrant Deedで不動産を譲渡した
- Bが不動産をRevocable Living Trustに移した
- Bの死亡後、Trusteeが第三者に売却した
このように、記録されたDeedを時系列で追うことにより、誰から誰に、いつ、どのような形で所有権が移転したのかを確認します。
調査では、一般に次の事項を確認します。
- 現在のRecord Owner(記録上の所有者)
- 取得時のDeedの種類
- 所有権を取得した日
- 不動産のLegal Description
- Assessor’s Parcel Number(APN)
- 単独所有か共有か
- 所有名義の持ち方
- Trustへの移転の有無
- 抵当権、判決、税金などに基づくLienの有無
- Easementや使用制限の有無
- 所有権に関係する訴訟やLis Pendensの有無
不動産購入時に確認すべきこと
不動産の購入時には、売主が本当にその不動産を売却する権限を持っているのかを確認しなければなりません。
例えば、売主が一人だと思っていたものの、実際には夫婦または親族との共有名義であった場合があります。また、売主本人ではなくTrustが所有者となっており、Trusteeが売却手続きを行う必要がある場合もあります。
さらに、売主が所有者であっても、住宅ローン、判決に基づくLien、税金のLienなどが残っていれば、売却代金からこれらを弁済し、必要な解除書類を記録しなければならないことがあります。
通常の売買取引では、Title CompanyがPreliminary Title Reportを発行します。このReportには、一般に次のような情報が記載されます。
- 現在の記録上の所有者
- 不動産のLegal Description
- Deed of Trustなどの担保権
- 税金のLien
- Judgment Lien
- Easement
- Covenants, Conditions and Restrictions(CC&Rs)
- Title Insuranceの補償対象外となる事項
California Department of Real Estateも、一般的な不動産売買では、買主、売主、金融機関、弁護士および不動産業者が、Title Companyの提供するTitle ReportやTitle Insuranceを利用していると説明しています。
もっとも、Preliminary Title Reportは、それ自体がTitle Insurance Policyではありません。Reportに記載された例外事項を確認し、疑問があれば、売買の完了前にTitle Companyや弁護士に説明を求めることが重要です。
相続財産を確定するときの所有者調査
亡くなった方がカリフォルニアに不動産を所有していた可能性がある場合にも、Chain of Titleの確認が必要です。
相続人や遺言の受益者から「故人はこの家を所有していた」と聞いても、それだけでは、その不動産が死亡時に故人の相続財産に含まれていたとは限りません。
例えば、次のような可能性があります。
- 生前に第三者へ売却または贈与していた
- 生前にRevocable Living Trustへ移していた
- Joint Tenancyで所有していた
- Community Property with Right of Survivorshipとして所有していた
- Transfer on Death Deedが記録されていた
- 故人が一部の持分だけを所有していた
- 離婚判決や財産分割合意により権利関係が変更されていた
- 故人が別名、旧姓または異なるスペルで記録されていた
Joint TenancyやTransfer on Death Deedなどの場合、死亡によって不動産が他の所有者や指定された受取人に移り、通常のProbate Estateに含まれないことがあります。California Courtsも、Joint TenancyやTransfer on Deathの指定がある財産は、簡易な移転手続またはProbate外の移転の対象になり得ると説明しています。
一方、死亡時に故人個人の名義で所有されていた不動産は、原則としてProbateの対象となる可能性があります。正式なProbateでは、Personal Representativeが相続財産を調査し、Inventory and Appraisal(DE-160)を作成して裁判所に提出します。California Courtsによれば、DE-160は、Estateが所有する財産とその概算価値を裁判所に報告するための書類です。
したがって、相続財産を正確に確定するには、単に固定資産税の記録やオンライン上の所有者情報を見るだけではなく、死亡日時点で記録されていたDeedと、その前後のChain of Titleを確認する必要があります。
ウェブ検索だけでは不十分な場合
不動産調査会社、Title Companyまたは不動産記録の検索業者に依頼すれば、オンラインのデータベースを利用して、所有者、Deed、Lienなどを調査してもらうことができます。
簡易的な調査であれば、次の情報が比較的短期間で得られることがあります。
- 所有者と思われる人物の氏名
- 最後に記録されたDeed
- Document Number
- Recording Date
- APN
- 固定資産税の評価額
- 過去の売買履歴
しかし、オンライン上の情報には限界があります。
Countyによっては、オンラインで検索できるのはGrantor・Grantee Indexだけであり、Deedそのものの画像は公開されていません。例えばSan Mateo Countyは、オンライン検索は参考情報にすぎず、記録書類の画像はデータベースに含まれないと案内しています。また、Placer Countyでは、Indexと書類の画像をRecorder’s Office内で閲覧できますが、画像はオンラインでは公開されていません。
そのため、確実な確認が必要な場合は、Document Numberなどを特定したうえで、Recorder’s Officeから実際のDeedのコピーを取得します。Countyによって、次のような取得方法があります。
- オンラインでコピーを注文する
- Recorder’s Officeの窓口で取得する
- 郵送で請求する
- 調査会社に現地で取得してもらう
- Certified Copyを請求する
古い書類については、紙、マイクロフィルムまたは庁舎内の端末でしか確認できない場合もあります。住所だけでは検索できず、所有者の氏名、Document Number、Recording Dateなどが必要になるCountyもあります。
Deedを確認するときの注意点
Deedを取得したら、少なくとも次の事項を確認します。
- Grantorは誰か
- Granteeは誰か
- 記録日はいつか
- Document Numberは何番か
- 不動産のLegal Descriptionが一致しているか
- APNが対象不動産と一致しているか
- 所有名義が個人、共有またはTrustのいずれか
- 持分割合が記載されているか
- 署名とNotary Acknowledgmentがあるか
- その後に別のDeedが記録されていないか
特に注意したいのは、住所とLegal Descriptionは同じものではないという点です。郵便上の住所が一致していても、Deedに記載されたLegal Descriptionが別の区画を示している可能性があります。
また、Assessorの情報は、固定資産税の評価や納税通知のために使用される情報です。所有者を調べる際の手掛かりにはなりますが、それだけで法的な所有権を確定できるとは限りません。
調査会社の検索結果と正式なTitle調査の違い
調査会社によるウェブ検索は、最初の段階で不動産の存在やDocument Numberを確認するために有用です。しかし、検索結果に記載された「Owner Name」だけで、現在の所有者を確定することは避けるべきです。
調査の目的に応じて、次のように使い分けることが考えられます。
- 所有の可能性を確認する初期調査
オンラインデータベース、Assessor情報、調査会社のProperty Reportを利用する - Deedの内容を確認する調査
County Recorderから実際に記録された書類のコピーを取得する - 売買や融資のための正式な調査
Title CompanyにPreliminary Title ReportやTitle Insuranceを依頼する - 所有権に争いがある場合
Chain of Title、関連契約、裁判記録などを確認し、必要に応じて弁護士が法的に分析する
まとめ
不動産購入時には、売主が正当な所有者であり、不動産を売却できる権限を持っていることを確認する必要があります。また、相続手続では、故人が死亡時にどのような形で不動産を所有していたのかを確認しなければ、相続財産の範囲や必要な手続きを判断できません。
インターネット検索や調査会社の簡易Reportは、調査の出発点としては有用です。しかし、確実な情報を得るためには、County Recorderに記録されたDeedや関連書類を取得し、Chain of Titleを確認することが重要です。
さらに、売買を予定している場合には、Title CompanyからPreliminary Title Reportを取得し、Lien、Easement、CC&Rsなども確認する必要があります。
不動産の名義や相続関係が複雑な場合、オンライン上の所有者表示だけで結論を出さず、記録書類を一つずつ確認することが、安全な取引と正確な相続手続につながります。
※本記事は、カリフォルニア州の不動産記録および相続手続に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の案件に関する法的助言ではありません。
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
ロサンゼルス・サンフランシスコ・ベイエリア
田中良和
