田中良和国際法律事務所

Chapter 11における「Automatic Stay(自動停止)」とは?

アメリカの連邦倒産法(Bankruptcy Code)に基づくChapter 11再建型破産手続きにおいて、申立と同時に発動される非常に重要な制度が「Automatic Stay(自動停止)」です。Automatic Stayの基本的な仕組みとその法的効力、債権者・債務者への影響、実務上の留意点について詳しく解説します。

破産申立が裁判所に受理されると同時に、連邦倒産法第362条(11 U.S.C. § 362)により、すべての債権者による債務者に対する特定の取立て行為が自動的に停止されます。裁判所による特別な命令や審理を待たずに効力を持つことから、「自動停止(Automatic Stay)」と呼ばれます。

主な禁止行為の例:

  • 債務者に対する訴訟の新規提起または継続
  • 債務者の財産に対する差押えや担保権実行
  • 債務者に対する債務返済の請求や取立て
  • 給与の差押えの継続
  • 債務者の財産を取得または占有しようとする行為

Automatic Stayは、債務者が事業再建のための再編計画(Reorganization Plan)を策定・提出する時間的猶予を与え、また、債権者間の平等な取り扱いを確保することを目的としています。つまり、債務者に呼吸する時間を与え、公平な分配の枠組みを裁判所の管理下で構築するための制度です。

ただし、Automatic Stayはすべての行為を無条件に禁止するわけではありません。以下のような例外や解除も認められています。

  • 例外行為:刑事手続き、家族扶養義務の一部請求、政府の規制行為 など
  • 解除申立(Motion for Relief from Stay):債権者が裁判所に対してStayの解除を求めることが可能。特に担保権者が不動産の差押えを再開したい場合などに行われる。

Chapter 11手続きにおいて、債務者が継続的な事業運営に不可欠と判断した仕入先などを「Critical Vendor(重要取引先)」として裁判所の承認を得た場合、通常は支払停止されるはずの申立て前の債権(prepetition claim)についても、例外的に全額または一部の支払いを受けられる可能性があります。

この制度は、重要取引先が供給を停止することで事業が中断し、再建が困難になることを防ぐ目的で運用されます。債務者側は、Critical Vendorプログラムを導入するにあたり、「支払いと引き換えに将来も供給を継続すること」を条件とすることが一般的です。

したがって、債権者としては、Critical Vendorの認定を受けることによって申立て前の未回収債権の回収チャンスが生まれる一方で、今後の供給契約条件について交渉力を失うリスクにも注意が必要です。

カリフォルニア州で債務者企業と取引のある企業や個人がChapter 11手続きに直面した場合、たとえ未回収債権があっても、債務者に対する請求書送付や督促もStayの対象となる可能性があります。違反すると制裁金や損害賠償責任が発生するリスクがあるため、弁護士に相談のうえ慎重に対応する必要があります。

Chapter 11におけるAutomatic Stayは、債務者の再建を支援し、かつ債権者間の公平を保つための重要な制度です。債権者としては、焦って自己判断で動かず、法的助言を得ることが重要です。また、Critical Vendor制度の活用によって、債権回収の可能性を広げる選択肢も検討すべきです。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案についての法律的助言を提供するものではありません。具体的なご相談はカリフォルニア州の弁護士にご連絡ください。

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田中良和

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