米国では、特に不動産売買において、Escrow(エスクロー) がよく利用されます。
Escrowとは、取引が完了するまで一定額の金銭をエスクロー口座で預かり、取引が無事に完了した時点で、権利を有する当事者に対してEscrow Officer(エスクロー担当者)から支払われる仕組みです。
では、いったんEscrowに入金した金銭を返金してもらうには、どのような手続が必要になるのでしょうか。
Escrow Officerは法的判断をしない
重要なのは、Escrow Officerは自ら法的判断を行う立場にない という点です。
つまり、Escrow Officerが「どちらの当事者にEscrow口座内の金銭を受け取る権利があるのか」を独自に判断することはありません。
そのため、Escrow OfficerがEscrow口座の金銭を支払うことができるのは、通常、次のいずれかの場合に限られます。
- 当事者双方の合意・共同指示がある場合
- 裁判所の命令がある場合
相手方が争う場合、Escrowからは原則として返金されない
たとえば、契約が途中で解除された場合であっても、相手方当事者がそのキャンセルに同意しない、またはキャンセルの有効性を争っている場合、Escrow Officerは一方当事者のみに金銭をリリースすることは通常できません。
仮に、法的には契約解除が有効であり、相手方の主張が明らかに誤っているように見える場合であっても、それでもEscrow Officerは法的判断を行わないため、独自の判断でEscrow口座の金銭を返金することはありません。
返金を受けるには裁判所の命令が必要になることがある
このように当事者間で争いがある場合、Escrow口座の金銭の返金を求める当事者は、訴訟を提起し、裁判所からEscrow口座内の金銭の返金を命じる命令を得る必要がある ことがあります。
すなわち、Escrowに入金された金銭は、いったん紛争状態になると、当事者の一方が「自分が正しい」と考えていても、それだけでは取り戻せない場合が多いのです。
Escrowへの入金は慎重に行うべき
このように、Escrow口座の金銭は、一度入金してしまうと簡単には返金されない ことがあります。
そのため、Escrowへ金銭を入金する際には、契約条件、解除条件、返金条件、紛争時の対応について、事前によく確認し、慎重に検討することが重要です。
まとめ
Escrow Officerは法的な紛争の解決者ではありません。したがって、当事者間に争いがある場合、Escrow Officerは独自判断で金銭を返金することはできず、当事者双方の合意または裁判所の命令が必要になります。
Escrowは安全な取引手段として有用ですが、いったん紛争になると資金が拘束されやすいため、入金前の段階で十分な検討を行うことが大切です。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和
