クライアントの企業からの相談で、「従業員がExempt従業員の最低賃金が上がったので、賃金を上げて欲しいと言ってきたが、その従業員がExemptに該当するか判断して欲しい」という相談が、ありました。
日本の企業には馴染みのないExemptの従業員とNon-Exemptの従業員ですが、カリフォルニアでは一般的な区別になります。
ExemptとNon-Exemptについて、解説します。
カリフォルニアで雇用契約や求人票を見るとよく出てくる “Exempt / Non-Exempt”。
これは簡単に言うと、残業代や休憩(ミール/レスト)など「賃金・労働時間ルール」の適用が変わる区分です。
誤分類(Misclassification)は未払い残業代等のトラブルに直結しやすいため、雇う側も働く側も「言葉の意味」だけでなく、判定基準まで押さえておくことが重要です。
1. 何が一番違うの?
Non-Exempt(原則:対象)
- 残業代の対象(1.5倍・2倍など)
- ミールブレイク・レストブレイクの対象
- 勤務時間の管理(タイムカード等)が重要
Exempt(一定の要件を満たす場合:免除)
- 一般に「残業代」等の規制から免除される(ただし“何でも免除”ではありません)
- 免除されるには、通常「給与額要件」+「職務内容(duty)要件」が必要
カリフォルニアの残業ルール(Non-Exemptの基本)は、1日8時間超〜12時間は1.5倍、12時間超は2倍など独特です。
また、ミールブレイクは「1日10時間超で2回目が必要」などのルールがあります。レストブレイクも一定の基準に沿って付与が求められます。
2. 「給料がサラリー=Exempt」ではない
日本語だと「管理職=残業なし」の感覚で語られがちですが、カリフォルニアでは“肩書き”だけでは決まりません。
典型的なホワイトカラー免除(Executive / Administrative / Professional)の基本は、一般に次のような要件が重視されます。
- 免除職務に“主として(primarily)”従事していること
- 裁量(discretion & independent judgment)があること
- 最低給与ライン(州最低賃金×2 など)を満たすこと
特にカリフォルニアでは “primarily engaged in” が強く、実務上、「業務時間の過半数(50%超)が免除職務」という理解が重要になります(連邦法より厳しめに働きやすい点に注意)。
3. 【2026年版】Exemptの最低給与ライン(ホワイトカラー免除)
カリフォルニア州の最低賃金は、2026年1月1日から $16.90/時です。
これに連動して、典型的な免除(Executive / Administrative / Professional)の最低給与要件は、目安として次のとおりです。
- 年額:$70,304
- 月額:$5,858.67(相当)
※計算イメージ:州最低賃金 × 2 × 40時間 × 52週
4. Exemptの代表的な類型
免除の運用は、業種別の Wage Order(賃金命令) に沿って整理されます。代表的な類型は以下のとおりです。
(1) Executive(管理職)免除
「管理」が主で、部門運営・人の管理が中心、などの実態が求められます。
“マネージャー”という肩書きだけでは足りません。
(2) Administrative(管理部門)免除
バックオフィスでも、裁量のある企画・運用・管理が中心かがポイントです。
単なる事務作業中心だと、免除に該当しないリスクが高まります。
(3) Professional(専門職)免除
いわゆる learned / creative professional の枠です。
こちらも職務実態が核心です。
(4) Outside Salesperson(外勤営業)免除
典型的には、勤務時間の半分超を社外で販売・受注活動しているかが重要になります。
(5) Computer Software(コンピュータ・ソフトウェア職)免除(特別枠)
要件が独特で、毎年レートが公表されます。2026年1月1日からの最低水準は目安として次のとおりです。
- 時給:$58.85
- 月給:$10,214.44
- 年給:$122,573.13
5. Non-Exempt側で特に重要な「残業・休憩」ルール
- 残業:1日8時間超は1.5倍、12時間超は2倍/7日連続勤務の扱いなど
- ミールブレイク:1日10時間超で2回目が原則必要(一定の条件でwaiveの議論があり得ます)
- レストブレイク:原則「4時間ごとに10分」等の考え方
※例外・免除・適用の細部は、業種(Wage Order)や勤務実態によって変わるため注意が必要です。
6. よくある誤分類パターン(トラブルになりやすい例)
- 「サラリー払ってるからExempt」と思い込む(それだけでは足りません)
- “Assistant Manager” でも、実態はレジ・品出し等の非免除業務が大半(50%超ルールに抵触しやすい)
- Exemptとして扱っているのに、最低給与ラインに満たない(2026年は年$70,304が目安)
7. 会社側の「最低限チェックリスト」
- 該当業種の Wage Order を確認する(業種で変わります)
- Exemptにするなら:
- 年$70,304(2026年目安)を満たすか
- 免除職務が業務時間の50%超か
- 裁量要件など、免除要件に合う実態か
- Computer Software免除なら、毎年公表レート(2026:時給$58.85等)を満たすか
まとめ
Exempt / Non-Exemptは「残業代が出る/出ない」だけの話ではなく、休憩や時間管理を含む労務管理の土台です。
特にカリフォルニアでは、肩書きではなく実態(duty)、そして最低給与ラインが強く問われます。
「うちは大丈夫」と思っていた区分が、実は誤分類だった――という相談は少なくありません。求人票・職務記述書・実際の業務内容まで含めて、早めに整理することが有効です。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士、日本弁護士
田中良和
