田中良和国際法律事務所

H-1Bビザと移民政策の最新動向(2025年9月)

2025年9月後半、米国移民政策に関して大きな動きが相次ぎました。特にH-1Bビザをめぐる規制強化は、米国内で働く外国人労働者やその雇用主にとって重要な影響を及ぼす内容です。本記事では、最新の大統領令や行政指針、専門団体からの報告を整理し、実務への影響を考えていきます。


ホワイトハウスは、大統領令を通じてH-1Bビザ申請費用の大幅引き上げを発表しました。これを受け、労働省(DOL)は「プロジェクト・ファイアウォール」と呼ばれる審査強化プログラムを始動。米国人労働者の雇用機会保護を目的とし、違反した雇用主には罰金やH-1Bプログラムからの除外といった厳しい制裁が科される可能性があります。

さらに、ホワイトハウスは新規H-1Bビザ申請に10万ドルの支払いを義務付ける大統領令に関するファクトシートを公表しました。背景として、H-1B労働者の比率増加(特にIT分野で65%以上)や、米国人従業員が解雇されH-1B労働者に置き換えられている事例が挙げられています。


国務省は、大統領令に関するFAQを公開しました。その要点は以下の通りです。

  • 対象は2025年9月21日午前12時01分(EDT)以降に提出される新規H-1B申請
  • 申請時に10万ドルの支払いが必要
  • 既存のH-1Bビザやそれ以前の申請には適用されない
  • 現行ビザ保有者の出入国には制限なし

AILAは、大統領令の具体的な影響について報告書を発表しました。

  • 有効期間は1年間(延長の可能性あり)
  • 原則として米国外にいるH-1B労働者が対象
  • ただし以下の場合は適用除外:
    • 発効日前に請願書が提出済み
    • 既に承認済みの請願の受益者
    • 有効なH-1Bビザを所持している者

また、国土安全保障省(DHS)はH-1B抽選方法を「加重選択プロセス」に変更する規則案を発表しました。賃金水準に応じて抽選回数が変わる仕組みです。

  • レベルIV(最高水準):最大4回
  • レベルIII:3回
  • レベルII:2回
  • レベルI(最低水準):1回

これにより、高賃金を提示する雇用主に有利となり、米国人労働者の賃金水準維持を狙っています。


永住権抽選プログラム

2025年9月16日以降、登録に1ドルの費用が必要となりました。不正な大量申請防止とコスト公平化が目的とされています。

ソーシャルメディア情報の収集

DHSは、移民関連フォームで申請者のソーシャルメディア情報を収集する方針を発表しました。国家安全保障を目的とし、市民権申請(N-400)、グリーンカード申請(I-485)、渡航許可証申請(I-131)などが対象です。

市民権テストの改訂

2025年10月20日以降に提出される市民権申請から、新しい「2025年版テスト」が導入されます。

  • 出題範囲が100問から128問に増加
  • 面接での出題数が10問から20問に増加
  • 合格に必要な正解数が6問から12問に引き上げ

まとめ

2025年9月の移民政策は、H-1Bビザを中心に大きな転換点を迎えています。申請費用の10万ドル化、賃金に応じた抽選制度、入国制限など、企業と外国人労働者の双方にとって大きな負担となり得る内容です。さらに永住権抽選や市民権試験にも新しいルールが適用され、移民全体に影響が及んでいます。

今後も政権の動き次第で規制が延長・拡大される可能性があり、引き続き最新情報を注視する必要があります。


免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法律アドバイスではありません。個別の案件については、必ず移民法専門の弁護士にご相談ください。

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